ライフカード株式会社様

40年の信頼を支える「プロの提案」
TDCソフトの主体的な取り組みが実現したライフカードのAWS移行

ライフカードは、クレジットカードをはじめ、プリペイドカードや集金代行など幅広い決済事業を展開し、近年は若年層に人気の高いキャラクターとの提携カードなどで、利用者を拡大している。事業拡大とトランザクション量増加に伴い、2015年構築のオンプレミスの加盟店管理システムは、性能と保守に課題を抱えていた。その解決のために、クラウド移行を決断。安定稼働が必須の重要な加盟店管理システムのクラウド化にあたり、40年以上の信頼関係を持つTDCソフトと協業して、難易度の高いAWSへの移行を成功させた。

導入の背景と課題

ライフカード
システム三部 システム二課長
島田 亮氏

■オンプレミス環境が抱えた「性能面」と「保守面」の喫緊の課題
ライフカードは、ホームページやアプリケーション開発を内製化しており、ユーザーの声を反映した迅速な改善を重ねシンプルで使いやすいUI/UXを追求している。一方で、同社のビジネスを支える重要な業務システムの多くは、オンプレミスで運用されてきた。その中の一つである加盟店管理システムは、加盟店の管理や審査、クレジットカード不正利用の管理などを担っている。このシステムには数万企業の加盟店情報を格納しており、事業継続の観点から停止は許されない重要なものだ。加盟店管理システムは長期にわたり利用してきたことで、「性能面」と「保守面」に課題を抱えていた。

ライフカード システム三部 システム二課長の島田 亮氏は「特に課題感として感じていたのは保守面の問題です。このシステムは2015年に構築されたもので、ハードウェアのEOL(End of Life)が2024年3月に迫っていました。更改前にはディスク故障が発生しており、すぐにシステムが止まるということはありませんでしたが、バックアップの取得に影響が出ていました」と振り返った

TDCソフトが選ばれた理由

■信頼関係とプロの意識
課題解決のために、加盟店管理システムの更改プロジェクトを進めることとなる。ライフカードではプロジェクトを成功させるために、支援してもらうパートナー選定を慎重に行った。そして、いくつかの候補を比較検討した結果、選ばれたのがTDCソフト(以下、TDC)だった。選定最大の理由には、ライフカードとの間に築かれてきた40年にもわたる長期的な信頼関係がある。

TDCは長年にわたりライフカードの開発・保守パートナーとして常駐支援サービスを提供しており、ライフカードのシステムの機能や特徴を熟知したメンバーを擁していた。さらに、この知見を持つメンバーが他の常駐パートナーとも円滑に連携を図れる点も、TDCの大きなアドバンテージだった。

TDCの提案とソリューション

TDCソフト シニアマネージャー
金融システム事業本部 ペイメント統括部
ペイメント2部 部長
宮田直也

TDCソフト シニアマネージャー 金融システム事業本部 ペイメント統括部 ペイメント2部 部長の宮田直也は「システム更改にあたりTDCでは、オンプレミス継続案とAWS移行案の二つを提示しました。しかし、オンプレミスのままではリスクが高すぎると判断し、迅速にインフラを刷新すべきとの考えからAWSへの移行を強く推奨したんです」と語る。

ディスク障害は出ていたものの加盟店管理システムのアプリケーション自体は安定稼働していた。そのため、オンプレミスのままハードウェア更改したほうが、テストの手間もインフラ変更によるリスクもはるかに小さい。しかしTDCでは、今後のビジネス成長を見据え、柔軟に拡張できるクラウドが最適と考え、移行に多少手間はかかるとしてもAWS化を強く推奨した。これは、楽で安全な方法(オンプレミスでのハードウェア更改)ではなく、将来のビジネス成長を見据えた提案だった。

■停止不可の重要システムのAWS移行、要件実現とトラブルへの迅速対応
今回のAWS移行では、既存システムの機能に大幅な改修を加えず、クラウドへのリフトメインでスピーディーに対応すること、サーバー保守期間の延伸期限である2024年3月までに移行を完了させることが要件とされた。

さらに「可用性」も重要な要件だった。加盟店審査や登録、不正管理といった業務は停止が許されず、止まる事での業務へのインパクトは極めて大きい。そのため、高いレベルの可用性確保が求められる。今回、災害対策(DR)構成はメインシステムとの同期協調が難しいため見送られたが、1つのAWSリージョン内にある地理的に離れた複数アベイラビリティゾーン(AZ)にシステムを分散配置しシステム全体の可用性を高める「マルチ AZ」構成を採用し高可用性を実現することとした。

また、性能確保の面では、オンプレミス時代にCPUリソース不足の課題が顕著だったため、データ増を考慮したキャパシティ(5年後想定の件数)に加え、重い処理が走った際にCPUやメモリがどれだけ必要になるかというサイジングが最大の焦点となった。これらは、あらかじめリソースを確保するのではなく、負荷が高まった際にシステムが停止・固まらないよう、クラウドの柔軟な拡張性が発揮できる構成を提案した。

導入後の成果

■運用環境の劇的改善と「課題を課題と感じさせない」パートナーシップ
移行プロジェクトは2023年4月から約1年間かけ進められた。AWSへの移行完了後、ライフカードのシステム運用環境は大きく改善されている。島田氏は「最も大きな変化は、オンプレミス時代に懸念されていたハードウェア起因のトラブルがなくなったことです。これまでにビジネスに影響を与えるようなトラブルもなく、システムは極めて安定稼働しています」と語っている。

運用面では、何か問題があった際の対応スピードが最も変わった点として挙げられる。オンプレミス時代には、万が一の障害発生時、休日夜間を問わず現場に人が駆けつけ対処する必要があった。しかしAWSへの移行と自動化の仕組みが構築されたことにで、この現場対応の必要がなくなり、担当者の負荷は大きく軽減されている。また、手動での復旧作業には人為的ミスの可能性が残るが、自動化されたことでそのリスクもなくなった点は高く評価されている。

ライフカードは、今回のプロジェクトにおけるTDCの働きについて、高い評価を下している。特に、業務部門と要件定義を行う際に、TDCも同席し技術とコミュニケーションの両面からサポートしており、「密度の濃い要件定義ができた」ことが成功の大きな要因だと島田氏は述べている。

TDCソフト 金融システム事業本部
ペイメント統括部 ペイメント2部
チーフエキスパート 松山真人

さらに、TDCはライフカードが気づかないうちに課題を解決し、島田氏が「プロジェクト進行中に深刻な課題というのは憶えていません」と言うほどスムースにプロジェクトは進行した。実際には数十件の課題が発生していたが、アプリケーションに関するものはわずかだった。インフラに関する課題は、TDCのインフラ部隊がアプリケーションに影響を及ぼす前段階で迅速に対処していたのだ。

TDCソフト 金融システム事業本部 ペイメント統括部 ペイメント2部 チーフエキスパートの松山真人は、「課題が発生した際に、ライフカードとの間に『何でも言えるような関係性』を築けていたことが、プロジェクトをうまく進められた理由だと考えています。私たちは、小さな問題でも直ちに共有し、共同で対処することを徹底しました。これにより、情報共有が遅れて被害が大きくなるような事態を防ぐことができたのだと思います」と語る。こうした「課題を課題と感じさせずに対処」するマインドが、今回のプロジェクトの成功を支えていたとも言える。

■複雑なプロジェクトを支えたTDCの「ハブ」機能と一元化体制
今回のAWS移行プロジェクトでは、クライアントであるライフカード、TDC社内の複数の専門チーム(インフラ、業務アプリケーション、Trustpro製品)、および他社パートナーが関与する複雑な体制下で進行した。TDCは、その中でクライアントと他のパートナーとの間を取り持つハブとしても機能した。

前述のようにTDCは、長年のライフカードの保守パートナーとして常駐しており、両社間の長い歴史の中で培われた強い信頼関係がある。この長年の関係性によりTDCでは、ライフカードの業務やビジネスの進め方を理解し、システム固有の機能などにも詳しい。さらに「他社パートナーとも円滑にコミュニケーションを図れる」という、大きな優位性を持っていた。

その上でTDCは、TDCの成功だけでなく「ライフカード全体でうまくいかなければ意味がない」という「自分ごと化」のマインドを持っている。ライフカードに常駐していたTDCの松山は「顧客や他社パートナー、TDC社内メンバーと面識があったため、この『自分ごと化』の姿勢がハブとしての円滑な連携を可能にした」と述べている。

TDCではプロジェクト成功のために、社内体制も変えている。以前のオンプレミス環境における体制は、問題箇所に応じてTDC社内の対応部署が分かれていた。これに対しTDCの松山は「私たちは、移行後の運用を見据えて、業務アプリケーションの部隊で窓口を一本化し、対応を一元化するようにしました。インフラ部分のこともアプリケーションの中身に関しても、できるだけ業務チームで対応できるように進めたのです」と語った。業務アプリケーション部隊で一元的に対応できるようになった点も、プロジェクトの成功要因の一つであり、移行後の運用レスポンスの向上にも寄与している。

今後の展望

■「クラウドファースト」を掲げる未来と、一蓮托生のパートナーシップ
ライフカードでは、グループとして「クラウドファースト」を方針に掲げ、重要な業務システムを含めたレガシーでモノリスなシステム構造を、今後は適宜マイクロサービス化しモダナイズしていく展望を描いている。この過程において、TDCが持つクラウドやAWSのスキル、DevOpsの知識は価値があり、引き続き協力体制を維持していく方針だ。

TDCの宮田は「これまでの業務に特化した領域の支援に加え、今後はTDC全体のリソースを活用し、ライフカード様の事業全般を統合的に支援してまいります。そのためにも、40年以上にわたり培ってきた『自分ごと化』のマインドと技術力を、適宜後輩たちにも継承していく考えです」と語った。そして、ライフカードの事業成長とTDCの事業成長を「一蓮托生」と捉え、より幅広い領域での支援を通じ、ライフカードの今後のデジタル化戦略を支えていく。

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