従業員のセキュリティ意識を高めるには?重要性・原因・向上方法を解説

サイバー攻撃の高度化や情報漏えいリスクの増加に伴い、近年注目されているのが、セキュリティ意識を高める取り組みです。
しかし「従業員にセキュリティ教育をしているのに定着しない」「どのような方法が効果的なのかわからない」など、課題を抱える企業も少なくありません。

本記事では、セキュリティ意識を高める重要性や低くなる原因、具体的な向上施策を紹介します。
組織のセキュリティ意識を底上げしたい企業担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

セキュリティ意識とは、情報やシステムを守るために安全に行動しようとする意識

セキュリティ意識とは、社内の情報資産やシステムを守るためにあらゆるセキュリティリスクを理解し、安全に行動しようとする意識のことです。

単なるリスク理解にとどまらず、実務の中で適切な判断と行動ができる状態まで到達していることが重要です。
例えば、日常業務の中で不審なメールを開かない、社内ルールに沿って情報を取り扱うなどの基本行動を、状況に応じて正しく選択できる状態を目指します。

そのためにセキュリティ意識向上の取り組みでは、以下のような意識・行動改革を実施します。

  • 座学のセキュリティ教育を通じたセキュリティ文化の醸成

  • メール訓練など実践的教育の実施による対応力・判断力の向上

  • 情報セキュリティポリシーの策定による行動指針の明確化

  • インシデント事例の共有による危機意識の向上

これらの取り組みが不足し、ひとりでもセキュリティ意識が欠けると、情報漏えい等重大なインシデント発生を招きかねません。

そのため、セキュリティ意識向上の教育や仕組みづくりを継続的に実施し、従業員一人ひとりの意識を強化していくことが不可欠です。

従業員のセキュリティ意識を高める重要性

従業員のセキュリティ意識が向上すると、セキュリティリスクの抑制だけでなく、ブランド価値や経営リスク面においてもメリットをもたらします。
以下では、従業員のセキュリティ意識を高める重要性について紹介します。

サイバー攻撃への対抗力向上

サイバー攻撃は年々高度化しており、標的型攻撃メールやランサムウェアなど、巧妙な手口が増加傾向にあります。

出典:令和7年における サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(令和8年3月)|警察庁サイバー警察局

これらはシステムの脆弱性だけでなく、人の判断ミスを狙うケースも多く、技術的対策だけでは完全に防げません。
例えば、実在する企業を装った標的型攻撃メールにより、感染したファイルを開く事例や、偽のログイン画面に認証情報を入力する事例があります。

このような人を標的とした攻撃において、最終的な防御ラインとなるのは従業員一人ひとりのセキュリティ意識です。

セキュリティ意識の向上施策を通じて、不審なメールなどの異常を見抜く判断力を高められると、被害発生を防げます。

情報漏えいリスクの低減

情報漏えいは、サイバー攻撃だけでなく、メールの誤送信やUSBメモリの紛失、パスワードの使い回しなどの人為的ミスによっても発生します。実際に東京商工リサーチによると、情報漏えい・紛失事故の原因として誤表示・誤送信が2番目に多いことが明らかとなりました。

出典:2024年上場企業の「個人情報漏えい・紛失」事故 過去最多の189件、漏えい情報は1,586万人分|東京商工リサーチ

人為的ミスによる情報漏えいは、日常業務の中で誰にでも起こり得るリスクです。
一方で、従業員のセキュリティ意識を見直すと軽減できるリスクでもあります。

例えば、メール送信前に宛先や添付ファイルを確認するなど、日常業務の習慣に関する意識を変えられると、ヒューマンエラーの防止が可能です。
セキュリティ意識の向上は、特別なシステム投資を伴わずに実施できる実効性の高い情報漏えい対策といえます。

セキュリティ意識向上施策と合わせて取り組むべき情報漏えい対策は、以下の記事をご覧ください。
情報漏洩対策の完全ガイド|企業の担当者が行うべき具体策と進め方

取引先や顧客への影響拡大を防ぐ

情報漏えいやサイバー攻撃の被害は、取引先や顧客へ拡大するケースも少なくありません。
顧客情報や取引先の機密情報が漏えいした場合、関係企業や顧客にも被害が及び、信頼関係やビジネス機会を損失します。

特に近年は大企業を狙うために、セキュリティ意識が不十分な中小企業や業務委託先を利用するサプライチェーン攻撃が増えているため要注意です。
実際にIPAの調査でも、サプライチェーンや業務委託先を狙った攻撃が、ランサムウェアに続く主要な脅威として位置付けられています。

出典:情報セキュリティ10大脅威 2026|IPA

取引先や顧客への被害拡大を防ぎ、自社の信頼や事業継続性を守るためにも、従業員のセキュリティ意識を高めることが大切です。

企業の信用・ブランド価値の保護

従業員のセキュリティ意識の低さが原因となり情報漏えいが発生すると、企業の社会的信用が損なわれます。
取引停止や損害賠償の発生に加え、ブランドイメージの低下により、長期的な売上や企業価値にも悪影響を及ぼします。

一度失った信頼を回復するには多大な時間とコストがかかるため、セキュリティ意識の向上により未然に防ぐことが重要です。
セキュリティ意識は単なるリスク対策ではなく、企業価値を守るうえで不可欠な経営戦略といえます。

組織全体のセキュリティレベル向上

従業員一人ひとりのセキュリティ意識が高まると、メール誤送信や不適切な情報共有などのヒューマンエラーの発生を防げます。
また、セキュリティツールを正しく理解・活用できるようになることで、アラートや警告内容を見逃さず、ツールと人の両面からセキュリティ耐性を高められます。

結果として、組織全体のセキュリティレベルを底上げでき、強固なセキュリティ体制の構築が可能です。

セキュリティ意識が低くなる主な原因

従業員のセキュリティ意識が低下する背景には、個人の問題だけでなく、組織や環境による要因も関係します。
以下では、主な原因を紹介します。

セキュリティリスクへの理解不足

従業員がサイバー攻撃や情報漏えいのリスクを理解できていないと、「自分は大丈夫」「自社は狙われない」といった過信が生まれます。
その結果、不審なメールの開封や安易な情報共有など、リスクの高い行動につながります。

また、リスクの重大性や影響範囲をイメージできていないと、セキュリティ対策の優先度が下がり、手順省略などの高リスクな行動を招きかねません。

セキュリティ教育不足

従業員に対して継続的かつ実践的なセキュリティ教育が行われていないことも、セキュリティ意識が低下する要因です。

セキュリティに関する知識や最新の脅威を学ぶ機会が不足していると、正しい判断ができません。
特に、入社研修以降教育が止まっている場合や、形式的なeラーニングだけで実践的な理解が伴っていない場合、時間の経過とともに意識が薄れます。

セキュリティ管理不足

情報セキュリティポリシーの遵守状況が管理されず、違反に対する指摘や是正が行われない環境もセキュリティ意識の低下を招く要因です。
管理が機能していない状態では、セキュリティに関するルールを守る重要性が軽視されます。

その結果、セキュリティ対策の形骸化が進み、組織全体のセキュリティレベルが低下します。

インシデントの共有文化がない

セキュリティリスクにつながるミスやインシデントの共有文化がない組織では、従業員のセキュリティ意識が高まりません。
他者の失敗や事例から学ぶ機会が失われるため、自身の業務に潜むリスクを具体的にイメージできないためです。

その結果、自分には関係ないという認識が生まれ、セキュリティリスクの高い判断や行動につながります。

セキュリティ意識の低さが招いた事故事例

以下では、従業員のセキュリティ意識の低さが招いた事故事例を紹介します。

フィッシング被害によるアカウント情報流出(矢野経済研究所)

2022年6月、従業員1名が誤ってフィッシングサイトにアクセスし、Microsoft 365のIDとパスワードが盗まれました。
その結果、数日後には当該アカウントが第三者に不正利用され、複数の取引先や関係者に対して不審なメールが送信されました。

発覚後は被害を受けた組織側では速やかにパスワード変更などの対応を進め、不正アクセスを遮断する措置が講じられました。
しかし、社内外の関係者の氏名やメールアドレスなど、情報の一部が外部に流出した可能性も確認されています。

本事例は、被害企業の従業員による一度の判断ミスがアカウント乗っ取りにつながり、組織全体や取引先に悪影響を及ぼした事例です。
フィッシング対策として、不審なサイトに情報を入力しない意識の徹底が重要であるといえます。

参考:弊社アドレスからの不審メールに関するお詫びとお知らせ|矢野経済研究所

データ消去漏れによる情報漏えい(BANDAI SPIRITS)

2019年に委託先の従業員が私物の外付けハードディスクを業務利用し、データを削除しないまま廃棄しました。
その後2024年に、第三者から情報が含まれている連絡を受けたことで発覚し、ハードディスク内に顧客情報を含んでいたことが確認されました。

対象情報にはメールアドレスや氏名、電話番号が含まれており、その一部が外部に流出した可能性があると発表されています。
なお、現時点では不正利用などの二次被害は確認されていません。

本事例は、データの消去や媒体管理など基本的なセキュリティ対策が徹底されていない場合、重大な情報漏えいを招くことを示しています。
委託先を含めた情報管理体制の強化や、データ廃棄時におけるルール徹底の重要性が再認識されました。

参考:委託先が私物HDD使用、データ削除せず廃棄 「プレミアムバンダイ」顧客情報漏えいの可能性|ITmedia news

マルウェア感染による情報漏えい(富士通)

1台の業務パソコンにマルウェアが侵入したことを起点に、社内ネットワーク上の複数の業務パソコンへ影響が拡大した事例です。
マルウェアが検知を回避するための偽装を行うなど高度な手法が用いられており、発見が困難であったことが影響拡大の要因とされています。

調査の結果、感染が確認された端末は最大49台にとどまり、影響は日本国内の社内ネットワークに限定されていました。
また、クラウドサービスの管理端末や顧客向けサービスへのアクセスは確認されておらず、社外への被害拡大はないと判断されています。

一方、マルウェアの挙動によりファイルの複製が実行され、顧客業務に関する情報が外部に持ち出された可能性が確認されています。

本事例は、高度化するマルウェア攻撃により、従業員のセキュリティ意識が高い企業でも、被害が拡大するリスクを示したものです。
セキュリティ意識が浸透した企業でも、アクセス制御などの技術的対策と、従業員教育による人的対策を組み合わせた多層のセキュリティ対策が必要です。

参考:個人情報を含む情報漏えいのおそれについて(調査結果)|富士通


セキュリティインシデント事例や有効な対策を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

セキュリティインシデント事例を解説|最新・有名事例に学ぶ対策と防衛方法
セキュリティインシデント対策の重要性。発生時の対応手順、事前に行うべき備えを徹底解説

セキュリティ意識を高める方法

従業員のセキュリティ意識を高めるには、セキュリティに関するルール整備や継続的な教育が不可欠です。
以下では、セキュリティ意識を高める方法について紹介します。

参考:情報セキュリティ10大脅威 2026|IPA

情報セキュリティポリシーの策定

インシデントが繰り返し発生している企業は、情報セキュリティポリシーの策定・見直しを優先しましょう。

以下が、策定すべき主な内容です。

  • 基本方針:情報資産を守る目的や、全従業員がセキュリティを自分事として捉えるべき方針を明示

  • 行動ルール:不審メールを開かない、外部送信前に確認する、離席時は画面ロックするなど、日常業務で守るべき行動を具体化

  • 禁止事項:パスワード共有、私用端末の業務利用、無断でのデータ持ち出しなど、禁止行為を明示

  • 判断基準・対応フロー:不審なメールや異常を見つけた際の報告先、初動対応、相談手順を定める

ポリシー内の基本方針や対策基準で行動基準を明示することで、適切な判断・行動の基準が明確となり、高リスクな行動を避ける意識を醸成できます。
その結果、パスワードの使い回しや私用端末の業務利用など、セキュリティ意識不足に起因した行動によるインシデントの低減が可能です。

情報セキュリティポリシーで定める具体的な内容や策定のコツは、以下の記事をご覧ください。
情報セキュリティポリシーの実施手順を徹底解説。作り方・具体例・運用方法も

セキュリティ意識を評価対象に組み込む

セキュリティ意識を評価制度に組み込むと、従業員の意識改革に対するモチベーションが向上し、行動変容を促します。
そのため、ポリシー策定やセキュリティ教育実施により、従業員のセキュリティ意識改善が継続しなかった場合に取り組むとよいでしょう。

具体的に取り入れたい主な評価内容は、以下のとおりです。

  • ルール遵守:パスワード管理や画面ロック、情報持ち出しルールを適切に守れている

  • インシデント報告:不審メール受信時や異常発見時に、速やかに報告・相談できているか

  • 教育・訓練への参加:研修やeラーニング、模擬フィッシング訓練に継続的に参加しているか

  • 日常業務での実践:メール送信前確認やアクセス権限の適切な利用など、日常業務で安全行動を実践できているか

  • 周囲への働きかけ:チーム内で注意喚起やルール共有を行い、セキュリティ意識向上に貢献しているか

セキュリティ意識を評価対象に設定する際は、違反を減点するだけでなく、適切な行動を正当に評価することがポイントです。
罰則中心の運用では萎縮を招くため、報告や未然防止など望ましい行動を評価に反映し、従業員が前向きに取り組める仕組みを構築しましょう。

模擬攻撃や訓練で実践力を高める

セキュリティ意識向上のためには、従業員が理解した内容を行動に落とし込めるよう、模擬攻撃や訓練を実施することも必要です。
セキュリティ意識が定着していても、実際にサイバー攻撃を受けると、判断力が鈍り、適切な行動が取れないケースも少なくありません。

そのため、模擬攻撃や訓練は、セキュリティ教育により知識を深めたうえで実施すると、より高い意識改善効果が期待できます。

特にセキュリティ意識向上に有効な取り組みは、以下のとおりです。

  • 模擬フィッシングメール訓練:不審なメールを見抜く力を養い、安易に開封・入力しない意識を定着させる

  • インシデント対応訓練:異常発生時に慌てず報告・相談・初動対応を行う意識を身に付ける

  • 標的型攻撃を想定したシナリオ訓練:実際の業務に近い状況で判断力を養い、リスクを自分事として認識できるようにする

  • 訓練結果のフィードバックと改善施策の実施:自身の弱点や課題を把握し、次回以降の行動改善につなげる

これらを実施する際は、対応するツールの活用が効率的です。
ツールを活用すると、訓練実施から結果集計、課題可視化、改善施策の立案まで効率良く進められ、改善サイクルをスムーズに回せます。

セキュリティ教育の定期的な実施

セキュリティ意識は一度の教育では定着が難しく、継続的な学習機会の提供が欠かせません。

具体的には、以下のような取り組みが有効です。

  • 年1回以上の定期研修の実施:基礎知識の定着や全社的な意識統一

  • eラーニングによる継続的な知識アップデート:最新の脅威や対策を学ぶ

  • 最新のインシデント事例や攻撃手法の共有:リスクを自分事として捉え、危機意識を高める

  • 部署や業務内容に応じたカスタマイズ教育の実施:現場業務に即した実践的な判断力・対応力を高める

なお、社内で教育リソースの確保が難しい場合は、セキュリティ企業への外注もひとつの手段です。
専門企業は、最新の脅威動向やインシデント事例を踏まえた研修プログラムが提供できるため、自社ではカバーしにくい実践的な教育を取り入れられます。

セキュリティ教育の進め方や手法、教材を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
組織を守るセキュリティ教育の実践ガイド|必要性・手法・進め方を解説

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まとめ:組織全体でセキュリティ意識を高めよう

従業員のセキュリティ意識向上は、サイバー攻撃のリスクを防ぐだけでなく、企業の信頼性や競争力向上にもつながる取り組みです。
高度化するサイバー攻撃に対応するには技術的対策だけでは限界があり、最終的には従業員の判断や行動がセキュリティを左右します。

そのため、セキュリティ教育実施や情報セキュリティポリシー策定など、複数の対策を組み合わせ、全従業員の意識を継続的に高めることが重要です。

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