セキュリティインシデント事例を解説|最新・有名事例に学ぶ対策と防衛方法

サイバー攻撃の手口は日々巧妙化し、ビジネス規模の大小を問わず、あらゆる企業がターゲットになっています。ひとたびインシデントが発生すれば、多額の損害賠償が発生するだけでなく、長年築き上げた信用を一瞬で失うことになりかねません。

しかし、「何を防ぐために、どう対策すれば良いかわからない」「漠然とした不安はあるものの、対策の方向性が見えない」と悩む組織も少なくありません。

本記事では、最新のインシデント事例や過去の重大な事例をひも解きながら、企業がどう対策すべきかを丁寧に解説します。セキュリティを強化し、インシデントに強い組織を作りたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

なぜ今、セキュリティインシデント事例を学ぶべきなのか

情報セキュリティインシデントとは、事業継続や情報資産を脅かすセキュリティ上の事象を指す言葉です。2025年の公表件数は500件を超え、現在も依然として高い水準で推移しています。

なぜ今、過去の事例を自分事として学ぶ必要があるのでしょうか。その背景には、技術や時代の変化があります。

参考:トレンドマイクロ|2025年の国内セキュリティインシデントを振り返る

サイバー攻撃のビジネス化・高度化

近年のサイバー攻撃の特徴とも言えるのが、ビジネス化の加速です。従来も機密情報の売買や組織的な犯行は行われていました。しかし、ランサムウェアをサービスとして提供する「RaaS」の登場により、攻撃の分業化と組織化、産業化が加速しています。

加えて、AIにより高度なフィッシングや攻撃が行われているほか、既存の対策ソフトの検知をすり抜ける手口も登場しています。このように、組織的かつ高度な攻撃が増加している今、事例を学び適切な対策を講じる必要があるのです。

アタックサーフェス(攻撃対象領域)の拡大

アタックサーフェスとは、攻撃者視点から見た、攻撃の対象となる領域のことです。近年の以下の要因により外部ネットワークとの接点が増え、アタックサーフェスも拡大しています。

  • DX推進による、デジタル技術を前提としたビジネスプロセスの構築

  • テレワークの普及

  • クラウドサービスの利用拡大

  • IoT機器の導入

従来は自社のネットワークを防御するだけで、一定以上の安全性を担保できていました。しかし、守るべき範囲が広がり、すべての確実な対策が困難になった現在、従来と同等のセキュリティ水準を維持できなくなりつつあります。狙われやすい領域を知り、適切な対処法を把握することは、これからのセキュリティ対策には欠かせません。

適切な対処と防衛の両方が不可欠な時代へ

情報セキュリティにおいては、広大な領域から小さな隙を見つけるだけで良い攻撃者側が有利とされています。また、脆弱性の発覚から対策までにも時間を要するため、インシデントやトラブルを100%防ぐことは不可能です。

そのため、企業には攻撃を前提とし、対応力と防衛力の両方を向上させる「サイバーレジリエンス」の考え方が求められます。インシデントの発生確率を最小限に抑え、仮に起こった場合も被害を最小限に抑えられる仕組みを整えれば、迅速な復旧が可能です。

このサイバーレジリエンスを高めるためにも、ぜひ過去の事例を学び、組織の防衛力と対応力を向上させましょう。

事例から見るセキュリティインシデントのビジネス被害

実際にインシデントが発生した場合、企業はどのようなダメージを負うのでしょうか。

事例から見えてくるのは、単なるデータの損失にとどまらない、経営を揺るがす深刻な被害の実態です。

多大な損害賠償と復旧費用の発生

個人情報や機密情報が流出した場合、被害者への見舞金や損害賠償請求が発生します。過去の判例では、被害者1人あたり数千〜数万円程度の損害賠償額が発生しており、件数が多くなるほど負担も増加します。

インシデント発生後の対応に要するコスト、復旧費用も無視できません。原因究明のための高度な調査や問い合わせ対応窓口の設置、システムの再構築にかかる費用は企業の経営を圧迫します。また、これら直接的な支出に加え、対応に追われる社員の人件費など、目に見えないコストも甚大になるのが実情です。

システム停止による生産性の大幅な低下と機会損失

ランサムウェアやハッキング、ウイルスなどでシステムが正常に動かなくなると、業務プロセスが完全に停止します。受発注の処理はもちろん、生産ラインの稼働や顧客対応も難しくなり、直接的な利益の損失と生産性の低下を招きます。

また、システム復旧には数週間から数カ月を要するケースも珍しくなく、その間、事業活動が停滞することで発生する機会損失は計り知れません。復旧後もデータの整合性確認や消失データの再入力などの作業が発生し、完全復旧には数カ月以上の時間と多大な労力を要します。

顧客からの信頼の失墜

インシデントによる損失のなかで、無視できないのが社会的信用の失墜です。「情報管理がずさんな企業」「セキュリティが甘い企業」というレッテルは、顧客離れや取引停止を招き、長年築き上げたブランド価値を一瞬で毀損します。

特に上場企業であれば株価の下落に直結し、資金調達にも悪影響を及ぼします。一度失った信頼を取り戻すには長い年月と多大な努力が必要であり、最悪の場合、企業の存続そのものが危ぶまれる事態にも発展しかねません。

被害者から一転、加害者となるリスクも

セキュリティインシデントには、被害者を加害者にする側面もあります。具体的には以下のようなケースで、加害者と扱われる場合があります。

  • 自社サイトが改ざんされ、閲覧者の機器を悪意のあるソフトウェア(マルウェア)に感染させてしまった

  • メールアカウントの乗っ取りにより、取引先や顧客にフィッシング・ウイルスメールを大量送信した

また、サプライチェーン攻撃の踏み台として利用された場合、取引先企業の業務停滞や大規模な情報流出を招きかねません。仮に複数の企業を巻き込んだ場合、被害者としての対応だけでなく、加害者としての責任を厳しく追及されます。

【関連記事】情報漏洩の有名事例一覧|原因・対策・教訓を徹底解説【2026年最新】

【最新】近年発生したセキュリティインシデント事例

本章では、セキュリティ対策を進めるうえでぜひ押さえておきたい、最新のインシデント事例を紹介します。

フジテレビ元社員による情報流出

2026年1月、フジテレビは元社員による重大な情報漏えい行為を認定し、同社員を懲戒解雇処分としたことを発表しました。

当該社員は、他の社員が取材過程で入手した情報や社内資料などを、競合他社に対して複数回にわたり不正に提供していたとされています。本件は、同社がコンプライアンス遵守の取り組みを推進する過程で発覚しました。

この事態を受け、同社は「再発防止に向け、引き続き情報管理の徹底に取り組む」とコメントを発表しています。

参考:株式会社フジテレビジョン|当社元社員による情報漏

アサヒグループのランサムウェア被害

2025年9月に発生したのが、アサヒグループホールディングスにおける大規模なシステム障害です。システム障害の原因となったのが、データを暗号化し、復号のために身代金を要求するランサムウェアです。

調査によると、拠点にあるネットワーク機器を経由して攻撃者が侵入し、ランサムウェアを実行したとされています。この影響で受注・出荷システムが大きな被害を受け、業務停滞による損失は約90億円に上る見通しです。

加えて、最大150万件以上の個人情報が漏えいした可能性も公表されました。影響の広さからシステムの復旧は長期化し、発生から約半年後の2026年2月に通常化したと報じられました。

参考:アサヒグループホールディングス|サイバー攻撃被害の再発防止策とガバナンス体制の強化について

複数の企業に向けた大規模なDDoS攻撃

2024年末から2025年初頭にかけて発生したのが、サーバーに対し多くのリクエストやデータを送り、停止に追い込むDDoS攻撃です。本事案では通信キャリアや航空会社、金融機関など、日本の重要インフラを担う複数の企業に対し、相次いで攻撃が実行されました。これにより、多くのWebサービスで利用や閲覧が不可となるトラブルが発生しています。

本事例の特徴は、広範囲のネットワーク機器へ一斉に負荷をかける「絨毯爆撃型」と呼ばれる手口が用いられたことです。世界中で乗っ取られたIoT機器が踏み台として悪用された結果、その攻撃規模は国内では異例のレベルに達しました。

参考:読売新聞|年末年始の企業「DDoS攻撃」、異例の広範囲「絨毯爆撃型」…対策難しく「能動的防御」の必要性

Marks & Spencerへのサプライチェーン攻撃

2025年4月、英国の老舗小売業者Marks & Spencerは大規模なサイバー攻撃を受けました。攻撃のきっかけとなったのは、心理的な隙や物理的な方法を利用し、情報を盗むソーシャルエンジニアリングです。攻撃者は同社が業務委託している業者を標的とし、巧妙ななりすましを用いて認証情報を窃取、システムへの侵入を果たしました。

さらに、ランサムウェアが実行されたため、オンライン注文システムが停止し、物流管理が機能不全に陥ったことで、数百億円規模の損失が見込まれる事態となりました。委託先のセキュリティインシデントが発注元の巨大な損失に直結するという、現代のサプライチェーンリスクの深刻さを象徴する事例と言えます。

参考:ロイター|英企業へのサイバー攻撃通報義務化要望、小売大手M&S会長が議会で発言

過去に起こった有名なセキュリティインシデント事例

過去の事例からも、多くの教訓が得られます。

ここでは、特に社会的影響が大きかった有名な事例を振り返ります。

NTT西日本の内部不正による顧客情報流出

NTT西日本の子会社において、元派遣社員が約10年間にわたり、約900万件に及ぶ顧客情報を不正に持ち出し、第三者に流出させていた事件が2023年に発覚しました。

流出の主な原因は、情報セキュリティ規定が遵守されておらず、USBメモリによる情報の持ち出しが可能な状態にあったことです。さらに、リスク管理の仕組みやチェック体制の形骸化など、組織的なガバナンスの課題も指摘されました。

事態を重く見たNTT西日本は、外部専門家を交えた社内調査委員会を設置し、原因の究明と再発防止に取り組むと発表しています。

参考:西日本電信電話株式会社|調査報告書

KADOKAWAへのランサムウェア攻撃

2024年6月に発生したのが、KADOKAWAグループへのサイバー攻撃です。攻撃の入り口はフィッシングと見られており、従業員のアカウント情報が悪用され、内部への不正アクセスを許してしまいました。

不正アクセス後に実行されたランサムウェアによりサーバーが暗号化され、「ニコニコ動画」を含む広範囲なサービスが長期停止に追い込まれました。加えて、情報の公開を盾に金銭を要求する脅迫行為も実行されています。

データの復旧と情報の暴露を同時に迫る二重脅迫型の恐ろしさと、完全復旧への道のりの険しさを社会に突きつけた事例です。

参考:株式会社KADOKAWA|ランサムウェア攻撃による情報漏洩に関するお知らせ

積水ハウスのEmotet感染事件

2022年、積水ハウスグループにおいて、「Emotet(エモテット)」への感染被害が発生しました。Emotetとは情報の窃取に加え、ランサムウェアやウイルスなどを呼び込む特性を持つ、マルウェアです。Microsoft Officeのマクロ機能を悪用するソフトで、感染経路はメールの添付ファイルやURLリンクとされています。

社内用パソコンがこのEmotetに感染したことで、社内外へ実在する従業員をかたるなりすましメールが拡散される事態となりました。なお、本事件について、システムの暗号化や情報漏えいなどは発表されていません。

参考:積水ハウス株式会社|弊社グループ従業員を装った不審メールに関するお詫びとお知らせ

Arupがディープフェイクによる詐欺に遭い巨額の損失

次にご紹介するのは、エンジニアリング企業Arupの香港支社で起こった、ディープフェイクによる詐欺事件です。犯行グループはAIで作った偽動画を利用して役員になりすまし、Web会議を通じて約40億円をだまし取りました。

標的となった担当者は、自分以外全員が「上司や同僚そっくりの偽物」という会議の中で指示を信じ込み、巨額の資金を送金してしまいました。AI技術が現実の人間を巧妙に欺くレベルに達していることを示し、既存の本人確認の限界を突きつけた衝撃的な事件です。

参考:日本経済新聞|テレビ会議、AI技術でなりすまし 英企業40億円被害

LINEヤフーの大規模情報流出事件

2023年、LINEヤフーにて大規模な個人情報流出が発生しました。発端は、関係会社である韓国NAVER Cloud社の委託先が所持するパソコンのマルウェア感染です。

攻撃者はNAVER Cloud社とLINEヤフー株式会社で共通の認証基盤が使われていることを悪用し、LINEヤフーのサーバーに不正アクセスを行いました。これにより、LINEアプリの利用者情報を含む、約44万件の情報が流出したと報じられています。

海外の提携企業の委託先に起こったインシデントが、自社の大きなトラブルへと発展した、サプライチェーン攻撃の恐ろしさをまざまざと見せつけた事件です。

参考:日本経済新聞|LINEヤフー、個人情報流出発表 ネイバー経由で44万件か

事例から見るセキュリティインシデントの主な要因・手口一覧

事例を分析すると、攻撃者の手口には一定の傾向があります。

主な要因を知ることで、何を対策すべきか、優先的に取り組むべきかを明確化できます。

マルウェア(ランサムウェア・ウイルス等)

マルウェアとはトロイの木馬やスパイウェア、ウイルス、ワームなど、悪意のあるプログラムの総称です。近年はデータを暗号化して金銭を要求する「ランサムウェア」が猛威を振るっていますが、情報を密かに盗み出すスパイウェアやシステムに害を及ぼすウイルスも依然として脅威です。

感染経路はメールやWeb閲覧が中心です。また、従業員が許可なく私用の端末やアプリを業務利用する「シャドーIT」をきっかけに、社内にまん延するケースも増えています。一度感染すると組織全体へ拡散するほか、サイバー攻撃の踏み台にされるリスクもあります。

不正アクセス(脆弱性悪用・なりすまし)

不正アクセスとは、セキュリティ体制やシステムの脆弱性、盗まれた認証情報を悪用して侵入する手口です。主にVPN機器やOSの更新漏れ、対応パッチ適用までのタイムラグ、フィッシングによる認証情報の漏えい、設定ミスなどが侵入経路となります。

また、推測されやすいパスワードの利用や、ID・パスワードの使いまわしを突かれ、正規ユーザーになりすまして侵入されるケースも少なくありません。攻撃側が有利とされる情報セキュリティにおいて完璧な対策は難しいですが、基本的な対策は必ず実施し、被害を拡大させない仕組みも構築しておきましょう。

内部不正・誤操作

外部からの攻撃だけでなく、内部起因の事故も後を絶ちません。メールの宛先間違いによる誤送信、クラウドストレージの公開設定ミス、外出先でのパソコンやUSBメモリの紛失など、従業員のうっかりミスはセキュリティインシデントに直結します。

一方で、正当な権限を持つ従業員が、処遇への不満や金銭目的から情報を持ち出す内部犯行にも警戒が必要です。不正アクセスと比べると件数は少ないですが、大規模な情報漏えいにつながるリスクもあるため、万全の対策が求められます。

【関連記事】内部不正とは?原因・リスク・対策などについて解説

ソーシャルエンジニアリング

ソーシャルエンジニアリングは、人間の心理的な隙や行動のミスにつけ込み、情報を盗み出す手口です。代表的なものには、緊急を装うメールで偽サイトへ誘導する「フィッシング」や、担当者になりすまして電話で情報を聞き出す手法などがあります。

また、背後から画面を盗み見る「ショルダーハッキング」や、捨てられた記録媒体や書類を狙う「トラッシング」といったアナログな手法も存在します。人の良心や不注意につけ込むため、システム上の防御だけで完全に防ぐことは困難です。

IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」に見る近年の傾向

「情報セキュリティ10大脅威」とは、2025年に社会的影響が大きかった事案を基に、公的機関であるIPAと約250名の専門家が審議・投票を経て選出した最新の脅威トレンドです。組織向け脅威はランク付けされており、優先的に対策すべきリスクを把握するための資料として活用できるよう設計されています。

順位 「組織」向け脅威 初選出年 10大脅威での取り扱い (2016年以降)
1 ランサム攻撃による被害 2016年 11年連続11回目
2 サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 2019年 8年連続8回目
3 AIの利用をめぐるサイバーリスク 2026年 初選出
4 システムの脆弱性を悪用した攻撃 2016年 6年連続9回目
5 機密情報を狙った標的型攻撃 2016年 11年連続11回目
6 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む) 2025年 2年連続2回目
7 内部不正による情報漏えい等 2016年 11年連続11回目
8 リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃 2021年 6年連続6回目
9 DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃) 2016年 2年連続7回目
10 ビジネスメール詐欺 2018年 9年連続9回目

出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」

これまでに解説した要因・手口とトレンドを参考にしつつ、万全のセキュリティ体制を築いていきましょう。

今後増加が予想されるセキュリティインシデント

テクノロジーの進化と共に、新たな攻撃手法が生まれています。

本章では、今後増加が予想されるセキュリティインシデントをご紹介します。

AIを悪用したディープフェイク・自律型攻撃

すでに現実の脅威となっているのが、生成AIを悪用したサイバー攻撃です。違和感のないビジネスメール詐欺の作成に加え、Arupの事例のようなディープフェイクを用いた「なりすまし」も一般化しつつあります。

さらに、自律型のAIが自ら脆弱性を探して攻撃する「自律型攻撃」の台頭も見過ごせません。人間には不可能なスピードと規模で攻撃が実行される恐れがあるため、基本対策の徹底に加え、より強固な防御態勢が求められます。

生成AIへの機密データ入力による情報漏えい

生成AIへの機密データの入力にも注意が必要です。学習をオフにできないツールを利用している、学習設定をオフにしていない場合、重要なデータが学習され、出力に利用される場合があります。

企業向けプランや学習オフの設定、APIからの利用で基本的な対策は可能です。しかし、万が一の事態を防ぐためにも、リテラシーの向上やガイドラインの策定は欠かせません。

悪意のある指示文でAIを誘導するプロンプトインジェクション

プロンプトインジェクションとは、AIに悪意のある指示文(プロンプト)を送り込むことで、不正な操作や情報漏えいなどを引き起こす攻撃手法です。AIエージェント特有の脆弱性を悪用したもので、近年その危険性が叫ばれています。

現時点では確実性の高い対処法が存在しないため、自律的にブラウザを操作するAIや、強い操作権限を求めるツールは原則として業務利用を控えるのが安全です。どうしても利用が必要な場合は、AIの操作を人間が都度承認する設定とセキュリティ教育を徹底し、攻撃者に隙を与えない仕組み作りが不可欠です。

セキュリティインシデントを未然に防ぐ事前対策

セキュリティインシデントは適切な事前対策により、発生リスクを最小限に抑えられます。

本章では、企業ならぜひ徹底したい基本の対策を3つご紹介します。

脆弱性の管理と多層防御の構築

不正アクセスやマルウェアによるセキュリティインシデントを防ぐためには、OSやソフトウェアを常に最新の状態にすることが基本です。その上で、ファイアウォールによる入口の対策、侵入を検知するEDR、多要素認証(MFA)などを取り入れ、多層的な防御を構築します。

これらの対策を施せば、セキュリティレベルが大きく向上し、仮に1つが突破されても被害拡大を食い止められます。また、重要データは定期的にバックアップを取り、ネットワークから隔離された場所に保管すれば、仮に攻撃者によりデータを暗号化されても円滑な復旧が可能です。

情報管理ルールの策定と体制整備

内部不正や誤操作によるインシデント、ソーシャルエンジニアリング被害の防止にはルールと体制の整備が欠かせません。情報へのアクセス権限を厳密に設定し、データの持ち出しや端末の盗難、盗み見などを防ぐ取り組みを実施しましょう。取り組みの一例は以下の通りです。

  • クリアデスク(席を立つ際に情報を含むものを放置しない)

  • セキュリティワイヤー(パソコン用の盗難防止ワイヤー)

  • 監視カメラ・入退出記録システムの導入

また、有事の際に素早く対応できるよう、セキュリティ専門のチームを設置し、緊急時の指揮命令系統を確立することも有効です。

従業員への教育

従業員へのセキュリティ教育も、インシデント防止には欠かせません。どれほど強固なシステムを組んでも、従業員の判断ミスが命取りになることがあります。

標的型攻撃メールを模した訓練や、定期的なセキュリティ研修を実施し、従業員のリテラシーを底上げしましょう。「不審なメールは開かない」「パスワードを使い回さない」などの徹底を促し、従業員一人ひとりが情報の守り手となる体制を作ることが重要です。

【関連記事】情報漏洩対策の完全ガイド|企業の担当者が行うべき具体策と進め方

セキュリティインシデント発生時の適切な対応方法

セキュリティインシデントは、どんなに万全の対策を行っても起こり得るものです。

万が一の事態に備え、被害を最小限に食い止めるための対応方法を押さえておきましょう。

被害拡大の防止と証拠保全

インシデントを検知したら、まずはLANケーブルを抜く、無線LANを切るといった物理的な遮断を行い、ネットワークへの拡散を防ぎます。この時、慌ててパソコンを再起動したりファイルを削除したりしてはいけません。原因究明に必要な痕跡(ログ)が消えてしまう恐れがあるためです。

また、自社で対応可能な場合は、被害範囲を素早く特定する「ファストフォレンジック(必要最小限のデータ解析)」などの手法が有効です。ただし、技術的に難しい場合は無理に操作せず、そのままの状態で専門業者へ調査を依頼する判断も必要です。

関係各所への報告・連絡・相談

社内の責任者へ報告し、対策本部を立ち上げます。大規模な個人情報の漏えいが疑われる場合は、法律に基づき個人情報保護委員会への報告が必要です。

また、不正アクセスなどの犯罪性がある場合は警察へ、ウイルス被害などはIPA(情報処理推進機構)へ届出を行います。被害が取引先に及ぶ可能性がある場合は、速やかに通知することが、信頼関係を維持するために不可欠です。

再発防止の徹底と状況の公表

専門家の支援も仰ぎながら原因を特定し、システムの復旧と再発防止策の策定を進めます。技術的な穴を塞ぐだけでなく、運用ルールの見直しもセットで行うことが重要です。

顧客や社会への影響が大きい場合は、隠蔽せず、適切なタイミングで事実関係や対応状況を公表しましょう。不都合な事実も含めて誠実に情報を開示する姿勢こそが、失墜した信頼を回復するための第一歩です。

セキュリティインシデント・事例に関するよくある質問

セキュリティインシデントや事例に関する、よくある質問とその回答をご紹介します。

セキュリティインシデントとセキュリティアクシデントの違いは?

「インシデント」は、ウイルス感染の疑いや不正アクセスの痕跡など、情報セキュリティ上の脅威となる事象全般を指します。

一方、「アクシデント」は、実際に情報の漏えいやシステムの停止といった被害・損害が顕在化した事故の状態を指します。セキュリティ対策においては、インシデントの段階で迅速に対処し、アクシデントへと発展させないことが重要です。

中小企業がサイバー攻撃の対象となった事例はありますか?

攻撃者はセキュリティが厳重な大企業を狙う足掛かりとして、対策が手薄な中小企業を狙う傾向にあるのが現実です。対策の不備やリテラシーの低さが狙われ、実際に多数のインシデントが報告されています。

経済産業省の調査によると、中小企業の約3割が何らかの攻撃を受けており、そのうち7割が取引先にまで被害が及ぶ「サイバードミノ」に発展したことが判明しています。

参考:経済産業省|中小企業の実態判明 サイバー攻撃の7割は取引先へも影響

インシデントが発生した場合、必ず公表や報告をしなければなりませんか?

原則として、被害拡大防止の観点から公表が推奨されます。特に個人情報については、「財産的被害が生じる恐れ」や「漏えいが1,000人を超える可能性」などに該当する場合、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務とされています。

隠蔽による信頼失墜のリスクは計り知れないため、法的義務の有無にかかわらず、透明性ある対応を心がけることが重要です。

参考:個人情報保護委員会|漏えい等報告・本人への通知の義務化について

自社だけで対策が難しい場合はどうすべきですか?

まずは、IPAや警察などの公的機関が設けている相談窓口を活用し、客観的な助言を求めましょう。

また、専門的な初期対応が必要な場合や、全体的なセキュリティ強化・教育に取り組みたい場合は、外部企業への委託が推奨されます。採用・育成コストをかけずに専門チームの力を借りられるため、より円滑で確実な対応が可能です。

「診断・分析」から「ガバナンス強化・人財育成」まで。TDCソフトならセキュリティ課題をワンストップで解決

セキュリティインシデントに強い組織を作るためには、技術的な対策とルールや体制の構築、従業員への教育を、経営課題として包括的に取り組むことが不可欠です。

 

TDCソフトでは、60年以上の支援で培われた現場力で、セキュリティの診断・分析から、最適なソリューションの導入、インシデント対応まで強力にバックアップします。さらに、豊富な知見を持つ専門家が、情報資産を守るための「体制構築」や、現場のリテラシーを高める「人財育成」といった、組織・人に関する対策も丁寧に支援します。

「何から手をつければ良いかわからない」「今の体制に不安がある」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。ビジネスを守り、成果につながる前向きなIT活用を実現するための最適なロードマップをご提案します。

TDCのセキュリティ支援の詳細・導入事例はこちら

インシデント事例に学び、セキュリティ体制の強化を進めることが重要

セキュリティインシデントは、どのような企業にも起こり得る脅威です。しかし、過去の事例から学び、適切な準備をしておけば、被害の最小化や復旧速度の向上は十分に実現できます。

日々多くのインシデントが報告されていますが、脅威を過度に恐れるのではなく、正しい知識と備えを持ってビジネスを推進しましょう。セキュリティレベルの高い環境づくりこそが、企業の持続的な成長を支える強固な基盤となります。

また、自社のみではセキュリティ体制の強化が難しい、専門チームの結成に課題がある場合は、ぜひTDCソフトにご相談ください。技術的な対策から体制構築、人財教育までワンストップで支援します。

お問い合わせ