UXの5段階モデル|各段階・活用シーン・成功のポイントを徹底解説

プロダクト開発において、「開発プロセスを効率化したい」「ユーザーニーズとビジネス目標を両立させたい」といったお悩みはありませんか。こうした課題を解決する手段として活用されているのが、UXの5段階モデルです。

このフレームワークを活用すれば、感覚や経験だけに頼らず、体系的かつ論理的にユーザー体験(UX)を設計できます。プロジェクト進行の指針となるほか、チーム内の共通言語として機能する点もメリットです。

本記事では、UXの5段階モデルの各要素から、具体的な活用シーンやよくある課題、成功のポイントまで徹底解説します。

UXの5段階モデルとは?

UXの5段階モデルとは、優れたユーザー体験(UX)を体系的に設計するためのフレームワークです。2000年にアメリカのUXデザイナーであるジェシー・ジェームズ・ギャレット氏により提唱され、後に著書「The Elements of User Experience」で詳しく解説されています。このモデルは、プロダクト開発プロセスを以下の5段階に分け、下層から上層へと積み上げていく考え方を基本としています。

  1. 戦略 (Strategy)

  2. 要件 (Scope)

  3. 構造 (Structure)

  4. 骨格 (Skeleton)

  5. 表層 (Surface)

基礎となる「戦略」から始まり、最終的な見た目である「表層」へと、段階的に具体化していくのが特徴です。良質なUXを創出し、ビジネス成果につなげる道筋を示すツールとして、提唱から20年以上たった現在でも多くの開発プロジェクトで活用されています。

UXの5段階モデルを構成する要素

UXの5段階モデルを構成する5つの要素について、それぞれを詳しく見ていきましょう。

各段階がどのような役割を担い、どのように連携しているのかを理解することが、モデル活用の第一歩です。

第1段階:戦略(Strategy)

「戦略」は、UXの5段階モデルにおいてもっとも重要で根幹をなす段階です。「なぜこのプロダクトを作るのか」「誰のどのような課題を解決するか」「プロダクトを通じて、企業として何を実現したいか」などを明確化し、ユーザーニーズとビジネス目標の両軸から方向性を定めます。

主な取り組みはユーザーインタビューや競合分析、自社の強み・弱みの整理などです。プロジェクトの方向性とUXの品質に影響する重要なプロセスのため、リソースと時間をかけて丁寧に実施しましょう。

第2段階:要件(Scope)

「要件」は、戦略で設定した目標を達成するために「何を提供するか」を具体化する段階です。ユーザーに価値を届けるために必要な機能とコンテンツの範囲を明確にし、プロダクトの仕様を固めていきます

本段階では、まずユーザーが体験する一連の流れを整理し、必要な機能要件やコンテンツ要件をリストアップします。重要なのは、ユーザーニーズやリソースに合わせて「やらないこと」も明確にすることです。やらないことの明確化は、プロジェクトの予算超過や遅延につながる機能の肥大化を防止でき、顧客に寄り添ったプロダクトの創出につながります。

第3段階:構造(Structure)

「構造」の段階では、要件で洗い出した機能やコンテンツを、ユーザーが理解しやすく利用しやすいように整理します。具体的には情報アーキテクチャ設計でコンテンツを分類・階層化し、インタラクションデザインによりシステムの応答や操作の流れを設計します。

アウトプットとなるのはプロダクト全体のページ構成と階層を示した「サイトマップ」、ユーザーの操作の流れを可視化した「ユーザーフロー図」などです。この段階で論理的な構造を構築しておくことで、後の画面設計やデザイン作業がスムーズに進みます。

第4段階:骨格(Skeleton)

「骨格」は、構造段階で設計した論理的な構成を、具体的な画面上のレイアウトとして可視化する段階です。サイトの設計図となるワイヤーフレームを作成し、ボタンやフォーム、ナビゲーションなどの配置を決定しながら、ユーザーが直接触れるインターフェースの設計を進めます。

本段階のポイントは色やデザインは考えず、情報の配置と優先順位だけに集中することです。これらに集中して骨格を固めれば、UXの最適化が容易になり、次段階の作業もスムーズに進みます。また、プロトタイプが完成した段階でユーザビリティテストを実施し、使いやすさを確認したり、問題点の有無を検証したりすることも有効です。

第5段階/最上位:表層(Surface)

UXの5段階モデルの最上位にあたる「表層」は、ユーザーが実際に目にする最終的なビジュアルデザインを完成させる段階です。本段階では骨格に対して配色やフォント、ロゴなどを適用し、プロダクトやブランドの世界観を画面全体に反映させていきます。 

本段階は単に見た目を整えるだけではありません。クリック可能な要素を明示するなど、視覚表現でユーザーの直感的な操作を助ける役割も担います。下層の4段階(戦略・要件・構造・骨格)という論理的な裏付けがあって初めて、表層のデザインが最大の成果を生み出すのです。

UXの5段階モデルを活用するメリット

UXの5段階モデルの導入は、単なる工程管理を超え、プロダクトの品質とチームの生産性を同時に向上させる強力なアプローチです。

本章では、なぜこのフレームワークが多くの現場で採用され、具体的にどのような恩恵をもたらすのかを解説します。

ユーザー体験とビジネス価値を統合的に設計できる

UXの5段階モデルを活用する最大のメリットは、UXデザインや開発の現場でずれが起こりやすい「ユーザー視点」と「ビジネス視点」を、論理的に接続できる点です。最下層の「戦略」でユーザーニーズや現状の把握と目的の定義をすることで、開発中に機能や見た目の議論だけに終始してしまう事態を防げます。

また、迷った際も適宜アイデアや行動が戦略に基づいているかを確認すれば、UXの向上とビジネス価値の両方につながる決断が可能です。結果として、ユーザーに支持され、かつ企業の収益にも貢献するプロダクトを生む確率を高められます。

リソース配分とプロセスを最適化できる

開発プロセスの階層化により、場当たり的な進行を防止できる点もUXの5段階モデルのメリットです。プロジェクトのロードマップとして機能するほか、各段階で何をすべきか、どの程度リソースが必要かを明確化しやすくなるため、リソース配分とプロセスを最適化できます。

また、トラブル発生時も「どの階層に原因があるか」を特定しやすいため、迅速かつ的確な対処が可能です。 原因の早期特定は致命的な手戻りを防ぎ、無駄なコストの発生と時間の浪費を最小限に抑えます。

チームの共通言語として機能する

UXの5段階モデルは、デザイナーやエンジニア、経営層といった異なる視点を持つメンバーをつなぐ共通言語として機能します。 例えば、エンジニアと他職種の間で起こりがちな「実装の難易度(構造)」と「配色の好み(表層)」が混ざった噛み合わない議論も、階層を意識することでスムーズに整理可能です。

また、メンバー全員が「今どの段階の、何について話しているか」を正しく共有すれば、認識の齟齬が激減します。 無駄なコミュニケーションコストを削減し、スムーズな合意形成と一貫性のあるアウトプットを実現できるのはUXの5段階モデルの大きなメリットです。

UXの5段階モデルの活用シーン

UXの5段階モデルは、その汎用性の高さから、さまざまなシーンで活用できます。

特に活躍するのが、「新規開発」と「既存改善」です。

新規プロダクト・サービスの開発

プロダクトやサービスの新規開発において、UXの5段階モデルはプロジェクトの迷走を防ぐ強力な「羅針盤」です。抽象的な「戦略(なぜ作るか)」を土台に、徐々に具体化を進めるフレームワークのため、論理的かつ当初の目標・目的を色濃く反映した、一貫性のあるプロダクト設計が可能です。

また、戦略で定めたゴールを、機能やデザインを決める際の判断基準にしながら進めるため、手戻りのリスクも最小限に抑えられます。結果として、ユーザーとビジネス双方にとって価値あるプロダクトを、効率的に開発できます。

既存プロダクト・サービスの改善

既存サービスが伸び悩む際、UXの5段階モデルはボトルネックを特定する「診断ツール」として機能します。 例えば、Webサイトのコンバージョン率低下の原因を探る際、単に表層部分のボタンの色やデザインを変えるだけでは解決しないことが多々あります。

そこでUXの5段階モデルを活用すれば、課題が配置(骨格)や機能(要件)、あるいはターゲット設定(戦略)にあるのかを体系的に検証可能です。 原因の階層を特定することで、表面的な対症療法ではない、抜本的な改善策を立案できます。

UXの5段階モデル活用の実務における課題

プロダクトやサービスの開発・改善において大きな効力を発揮するUXの5段階モデルですが、プロジェクトで活用する際、いくつかの現実的な課題に直面することがあります。

これらの課題を事前に理解し、対処法を考えておくことが、スムーズなモデル活用の鍵です。

「何をすれば良いか」が見えにくい

UXの5段階モデルは、あくまで思考のフレームワークであり、具体的なタスクリストではありません。そのため、全体の流れや概念は理解できても「自社のプロジェクトで、具体的に何をすれば良いのか」というアクションプランに落とし込むのが難しい場合があります。

特にUXデザインの経験が浅いチームでは、各段階でどのような調査やアウトプット作成が必要かわからず、業務が停滞してしまうケースも少なくありません。汎用性の高さゆえの抽象性が、実務での活用ハードルになる点には注意が必要です。

リソースや時間の制約で丁寧な実施が難しい

理想的なUXデザインプロセスをすべて実行するには、相応の時間とコストが必要です。特に戦略段階でのユーザーリサーチや、骨格段階での複数回にわたるユーザビリティテストは、多くのリソースを要します。

しかし、多くの現場では予算や納期が厳しく、これらの工程が省略されたり、簡略化されたりすることが少なくありません。重要プロセスを省略すれば品質低下のリスクが高まるというジレンマは、UXの5段階モデルを実務で活用する際の大きな課題です。

チーム内での理解度にばらつきが生じやすい

UXの5段階モデルをチームの共通言語として活用するには、フレームワークに対する一定以上の理解が不可欠です。しかし、デザイナー以外の職種、例えばエンジニアや営業担当者にとっては馴染みが薄く、理解度に差が生まれがちです。

丁寧に説明すれば問題にならないケースもありますが、やはり理解度に差があると認識のずれがミスコミュニケーションの原因にもなりかねません。大きく意味を取り違えると、トラブルに発展するリスクもあるため、導入時の丁寧な説明と、定期的な理解度確認を欠かさないようにしましょう。

UXの5段階モデル活用を成功に導くポイント

前述した課題を乗り越え、UXの5段階モデルを実務で効果的に活用するには、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。

戦略策定を丁寧に行う

UXの5段階モデルは下層から上層へと積み上げる構造であり、土台となる「戦略」の質がプロジェクト全体の成否を左右します。仮に戦略が曖昧なまま進むと、次の要件定義がスムーズに進まず、その後の設計や開発の方向性がズレたものになりかねません。

プロジェクトの初期段階で十分な時間とリソースを投下し、「誰の、何を、なぜ解決するのか」を徹底的に議論・定義することが成功への最短ルートです。戦略を固めることで、後工程での手戻りや無駄な開発コストを防止でき、よりユーザーニーズに沿ったプロダクトに仕上がります。

各段階を行き来しながら精度を高める

UXの5段階モデルは、必ずしも下から上へ一直線に進むものではありません。 実際は、各段階を柔軟に行き来する反復的なプロセスとして進めることが推奨されます。

例えば、骨格段階でプロトタイプをテストした結果、構造や要件に問題が見つかれば、躊躇せず前の段階に戻って修正しましょう。後工程で得た知見を前段階にフィードバックすることで、問題の根本を解決でき、最終成果物の完成度と戦略性を着実に高められます。

共通言語として機能する環境を構築する

モデルを共通言語として機能させるには、まずチーム全員にUXの5段階モデルの概要を理解してもらうことが不可欠です。 プロジェクト開始時に全体像と各段階の役割を説明し、いつでも参照できる資料として残すとスムーズに環境を構築できます。

また、議論の際に「今どの段階の話をしているか」を確認し合う習慣をつけることで、認識のズレを防ぎ、スムーズな合意形成につなげられます。

UXの5段階モデルに関するよくある質問(FAQ)

ここでは、UXの5段階モデルに関する、実務担当者やリーダーからよく寄せられる質問にお答えします。

UXの5段階モデルはどんなサービス・製品にも活用できますか?

UXの5段階モデルは、幅広いデジタルプロダクトに活用できる汎用性の高いフレームワークです。Webサイトはもちろん、スマートフォンアプリや業務システムといった多様なサービス・製品に活用できます。

ただし、UXの5段階モデルは下層から積み上げていく思考法です。そのため、早期にリリースし、市場の反応を見ながら頻繁に仕様変更を行うような開発プロセスとは、やや相性が悪い場合もあります。

5段階すべてを必ず実施する必要がありますか?

UXの5段階モデルはプロジェクトの規模や期間、予算に応じて柔軟に対応することが重要です。小規模なプロジェクトであれば、各段階のアウトプットを簡略化したり、一部の工程を統合したりしても問題ありません。

ただし、思考のプロセスとして「戦略」や「要件」を考えず、いきなり「表層」のデザインから始めるのは失敗のリスクが非常に高くなります。形式的なドキュメント作成は省略しても構いませんが、戦略・要件の思考ステップは必ず踏むようにしましょう。

活用には専門知識が必要ですか?

モデルの概念を理解し、チームの共通言語として用いるだけであれば、特別な専門知識は必要ありません。しかし、各段階で質の高いアウトプットを出すためには、それぞれの専門スキルが求められます。

例えば、戦略段階ではリサーチスキル、構造段階では情報アーキテクチャの知識、表層段階ではビジュアルデザインのスキルが必要です。社内に適任者がいない場合は、外部の専門家やパートナー企業の協力を得ることで、質の高いアウトプットを実現できます。

TDCソフトのUXデザイン支援なら多角的なサポートが可能

「UXの5段階モデルの理論は理解できたが、実践に必要なリソースやノウハウがない……」といった課題は、多くの企業が直面する現実です。TDCソフトは、60年以上のシステム開発実績を基盤に良質なユーザー体験の創出をサポートする、UXデザイン支援サービスを提供しています。私たちの強みは、以下の3点です。

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  • 企画から開発まで「一気通貫」で対応:戦略策定からUIデザイン、開発、運用まで一貫して支援し、ゆがみのないサービスリリースを実現

UXの5段階モデルを踏まえたプロダクト開発はもちろん、その後の内製化まで見据えた手厚いサポートを提供しています。「自社だけでは難しい」と感じているなら、まずは一度TDCソフトにご相談ください。

まとめ|UXの5段階モデルの実践でユーザー体験を向上させる

UXの5段階モデルは、感覚に頼らず論理的にユーザー体験を設計するための強力なフレームワークです。戦略から表層まで段階的に積み上げることで、ユーザーとビジネス双方に貢献するプロダクトを効率的に開発できます。

各段階をチームの共通言語として活用すれば、認識のズレを防ぎ、スムーズな合意形成が可能です。成功の鍵は戦略の策定を丁寧に行い、柔軟に各段階を行き来しながら精度を高めることです。

最初は大変かもしれませんが、すべてを完璧にこなす必要はありません。本記事で紹介したポイントを参考に、できる範囲から少しずつ実践してみてください。また、もし実践に不安がある場合は、専門家のサポートを活用することも有効な選択肢です。

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