AIを新規事業に活用する方法|シーン別の活用法からリスク対策まで解説

近年、多くの企業が導入を進めているAIですが、セキュリティや運用方法に苦戦する組織も少なくありません。AIを使って新規事業を加速させたいものの、安全かつ効果的な使い方がわからず、新規事業への活用に踏み出せていない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、AIを新規事業に活用するメリットから、シーン別の活用法、成功事例、リスクまで丁寧に解説します。リスクへの対策もあわせて解説しているので、AIを効果的に活用し、新規事業を円滑に推進したい方は、ぜひ参考にしてください。

AI導入後の運用リスクを最小限に抑えたい方は、社内ネットワーク内で安全に使えるAI環境「Nenoa」もあわせてご覧ください。

 

 

 

新規事業においてAIはどのような価値をもたらすか?

AIはアイデア創出から事業化まで、さまざまなフェーズにおいて推進スピードと意思決定の質を引き上げる、強力なパートナーです。

具体的にどのような価値をもたらすのか、3つの観点から見ていきましょう。

新規事業立ち上げのスピード向上

AIを活用すれば、新規事業の立ち上げを加速できます。未知の領域へ挑戦する際、人は心理的なハードルを感じ、最初の一歩を踏み出しにくい傾向があります。一方でAIは指示に従ってアウトプットを生成するため、アイデア出しや戦略の策定などを担わせることでスムーズな初動を後押しします。

戦略や計画などを素早く目に見える形にできることも特長です。早い段階で案を形にし、共有することで、フィードバックや協力を得やすくなるため、より円滑に事業立ち上げを進められます。情報収集や文書作成といった、比較的単純な作業を大幅に効率化できる点もメリットです。

客観的かつ高精度な意思決定を支援

大量のデータを読み解き、客観的に分析することはAIの得意分野です。高度な分析を短時間で行えるため、担当者の主観や経験則に頼らない客観的な意思決定を強力に支援します。

また、人的バイアスの影響を受けにくいため、人間だけでは見落としがちな市場のトレンドや競合の動向なども多角的に洗い出せます。そのため、新規事業開発の経験が浅いチーム・人材であっても、客観的なデータに基づく市場選定やアイデア評価が実現可能です。

AI時代における競争力の維持・確保

AIの活用は、市場における競争力を維持・確保するための必須条件になりつつあります。野村総合研究所の2025年の調査(売上高上位企業が対象)によると、生成AIを「導入済み」と回答した企業は57.7%に上り、多くの企業でAI活用が進んでいます。

運用に苦戦する企業もあるものの、データに基づく精緻な意思決定やタスクの自動化により、生産性を向上させている企業も少なくありません。そのため、AI時代の新規事業立ち上げにおいて、競争力の維持・確保やスピードの向上にはAI活用が不可欠です。

参考:野村総合研究所、日本企業を対象に「IT活用実態調査(2025年)」を実施

新規事業でAIを活用できるシーンとプロンプト例

新規事業において、AIはさまざまなシーンで活用できます。

ここでは特にAI活用の恩恵を感じられる、具体的な活用シーンとプロンプトの例をご紹介します。

アイデア創出

AIを活用すれば、新規事業のアイデアとなるヒントを迅速かつ大量に生成できます。すべてが有用なアイデアではありませんが、質よりも量を重視したい場面、思考を深めたい場面では頼もしいパートナーとして機能します。

また、自社が保有する技術やノウハウ、市場の動向、トレンドといった情報を入力すれば、多角的な提案も可能です。

<プロンプト例>
あなたは優秀な新規事業開発のプロフェッショナルです。
以下の情報をもとに、新規事業アイデアを5つ提案してください。

  • 自社の強み:[具体的な技術や資産]

  • ターゲット:[想定する顧客層]

  • 解決したい課題:[顧客の不満や課題]

市場・顧客のリサーチ

多くのAIはWeb検索に対応しており、大量の情報を短時間でリサーチできます。そのため、市場調査や競合分析、顧客ニーズの把握など、新規事業に関わる情報の収集を大幅に効率化できます。

収集した情報を分析すれば、ターゲットペルソナの作成や競合の強み・弱みの整理などをスムーズに進められる点もメリットです。

<プロンプト例>
以下の情報をもとに、新規事業参入に向けた市場調査と競合分析をしてください。

  • 参入を検討している領域:[業種・サービス概要]

  • 自社の特長:[強み・弱み]

  • 調査してほしい項目:市場規模の概算、主要競合の動向、顧客ニーズ

事業計画・戦略の立案

AIはビジネスやマーケティングの知識を幅広く持っており、さらに最新情報の検索も可能です。そのため、決めるべき論点が多く、思考が行き詰まりやすい事業計画の策定においても優秀な相談役となります。

また、専門的な視点での助言も得られるため、深い専門知識がなくても、一定水準以上の計画・戦略を立案できます。複数のシナリオを比較させて方向性を定める、事業のシミュレーションをするといった使い方ができることも利点の一つです。

<プロンプト例>
以下の事業アイデアをもとに、[業種名]のビジネスモデルを想定した事業計画書のドラフトを作成してください。

  • 事業アイデア:[概要]

  • 必要な項目:ビジョン、ターゲット、提供価値、収益モデル、想定コストなど

【関連記事】新規事業を成功に導くロードマップの作り方|作成の流れ・書き方・活用法を徹底解説

壁打ち・仮説検証

新規事業の計画・戦略を煮詰めたり、仮説を検証したりする段階でもAIの活用が有効です。AIとの対話を通じて思考を深められるほか、より深い分析が可能なモデルを活用すれば仮説の妥当性も多角的に検証できます

事業計画の改善点や、計画の弱点なども洗い出せるため、失敗リスクの低減も期待できます。また、マーケティング施策の検証方法やユーザー調査の設計といった、具体的な検証の進め方についての相談も可能です。

<プロンプト例>
あなたは事業戦略とマーケティングの両面から批判的に評価する経営コンサルタントです。
以下の新規事業案に対し、事業が失敗する最大の理由を3つ挙げ、それぞれの改善案を提示してください。

  • 新規事業案:[概要・詳細]

資料・文章作成

新規事業の推進では、企画書や提案書、議事録などさまざまな資料が必要です。こうした資料も、草案作成をAIに任せることで、資料作成にかかる時間を大幅に削減できます

さらに、文章のテイストも自由に調節できるため、経営層向けのエグゼクティブサマリーから社内共有用の文章まで幅広く対応できます。スライドや画像の生成に対応したAIを活用すれば、プレゼン用のスライド・資料の作成も可能です。

<プロンプト例>
以下の事業概要について、経営会議で承認を得るためのプレゼン資料のアウトライン(目次構成)を作成してください。
各スライドで伝えるべきキーメッセージも箇条書きで併記してください。

  • 事業概要:[テキスト]

【関連記事】AIの社内活用で業務効率化を実現|活用シーン・成功事例・ツールの選び方を解説

AIを活用し、新規事業を加速させた事例

AIは、新規事業推進におけるさまざまな課題の解決に貢献しています。

ここでは、実際にAIを活用して新規事業を加速させた企業の事例を2つご紹介します。

膨大なアイデアの創出・絞り込みを、AIで2週間に圧縮

日建リース工業は、新規事業のアイデア出しで「経験不足」と「アイデアの総量の少なさ」に課題を感じていました。そこで新規事業に特化したAIサービスを導入し、アイデアを高速かつ大量に生成できる環境を整えました。

その結果、プロンプトを調整しながら1週間で約1,000個のアイデアを生成し、続く1週間の部内検討で9つの事業化案への絞り込みを実現しています。経験の浅さをAIによりカバーし、アイデアを事業化案に落とし込むフェーズまで進めた好例です。

参考:HASSAN|1,000個の案出しから、事業案の絞り込みまで2週間!日建リース工業がスピーディーに「HASSAN」を活用できた理由

自社の技術資産とAIを掛け合わせ、新規事業の種を効率的に発掘

日本ガイシ(現NGK株式会社)は、自社の製品・技術の新規用途探索にAIを活用した実証実験を実施しました。同社は2030年に新規事業で売上高1,000億円以上を目指す目標を掲げており、AI活用はその実現に向けた取り組みのひとつです。

実証実験では、自社の技術・製品情報と最新の論文・特許データを取り込んだ専用AIを構築し、技術の新しい活用先を効率よく探索できる仕組みを整えました。これにより100件以上の提案が得られ、10件以上の有望な事業の種を発掘しています。属人的なスキルや経験に頼らず、未開拓市場を効率的に探索できる体制を整えた好事例です。

参考:NGK株式会社:独自のAIを活用した用途探索の実証実験で新事業案の抽出に成功 社内の保有資産と連携させ市場ニーズにマッチした新事業創出を推進

新規事業でAIを使う際に把握しておくべきリスク

AIは新規事業開発において強力な武器となる一方で、ビジネスでの利用にはいくつかのリスクも存在します。

ここでは、実務にAIを取り入れる前に必ず把握しておくべき、4つのリスクを解説します。

未公開の事業アイデアや機密情報の漏えい

無料のAIツールなどに機密情報を入力すると、そのデータがAIの学習に利用され、外部へ流出する危険性があります。特に、未公開の事業アイデアや顧客データ、機密文書などをアップロードしたり、入力したりすると意図しない経路で情報漏えいを招くため注意しましょう。

また、金融や医療、防衛、法務、官公庁など、業界ルールや法規制によってクラウド型AIの利用が制限されている業種も少なくありません。こうした規制を知らないまま機密性の高い情報をAIに入力してしまうと、重大なコンプライアンス違反や情報漏えいインシデントに直結するリスクがあります。

ハルシネーションによる事実誤認と意思決定ミス

ハルシネーションとは、AIが事実とは異なる情報を、あたかも真実であるかのように出力する現象です。情報の真偽を自ら確認する機能を持たないことが原因で、性能が向上した近年のAIモデルでも起こりえます。

特にニッチな市場の動向や最新情報、専門知識などを尋ねた場合、架空のデータが生成されるケースも少なくありません。この誤情報を検証せずに受け入れると、致命的な意思決定ミスを引き起こすため注意が必要です。

AIの過信による検証プロセスの省略・判断ミス

AIが提示した情報やアイデアを過信し、人間による検証プロセスを省略することは非常に危険です。AIから肯定的なフィードバックを得たとしても、それが「事業として正解である」とは限りません。特に、顧客の感情や市場の受容性といった定性的な要素は、AIの回答のみでは実態の把握が困難です。

実際のターゲット顧客へのヒアリング、関係部署によるフィードバックや承認は、AIでは代替できない検証プロセスです。AIはあくまで思考をサポートするツールと捉え、最終的な判断は人間が責任を持って実施しましょう。

「著作権・他者の権利侵害リスク」と「コンプライアンス・ガバナンスの欠如」

著作権や他者の権利を侵害するリスクも、新規事業においては無視できません。AIは既存の著作物や特許と酷似したものを生成することがあるため、商用利用の前には念入りな確認が必要です。

また、コンプライアンス・ガバナンスが不十分な状態でのAI運用にも注意が必要です。明確な社内ガイドラインが整備されないままAI運用を進めると、未公開情報の予期せぬ流出や、管理されていないAI利用(シャドーAI)を招く恐れがあります。最悪の場合、個人情報保護法やNDAの違反により企業の信頼を損なうリスクもあるため、ガイドラインと業務フローの整備が不可欠です。

新規事業におけるAIリスクに対処するための基本的な考え方

前述したリスクの多くは、適切なツール選定と運用ルールの整備で対処できます。

ここでは、その基本となる3つの考え方を解説します。

セキュリティ水準の高いAIツールの活用とルールの整備

機密情報の漏えいを防ぐためには、AIツールの選定と社内ルールの整備が前提です。入力データがAIの学習に使われない法人向けのAIや、社内環境で完結するオンプレミス型AIといった安全性の高いツールを選定しましょう。あわせて、ISO 27001やSOC 2などの第三者セキュリティ認証の取得状況を確認すると、よりリスクの低いツールを見つけることができます。

入力可能な情報の定義や生成物の商用利用フロー、インシデント発生時の対応などを定めたAI利用ガイドラインを整備することも重要です。安全性の高いツールとルールを組み合わせることで、AIに起因するリスクを大幅に低減できます。

【関連記事】プライベートAIとは?パブリックAIとの違い・導入メリット・構築方法を解説

出力の事実確認と妥当性検証を徹底する

ハルシネーションや権利侵害、判断ミスのリスクを踏まえると、AIの出力をそのまま業務に使用することは避けるべきです。統計データや固有名詞、専門的な見解が含まれる場合は、必ず公的機関のサイトや企業の公式サイトなどで一次情報を確認しましょう。

また、新規事業の計画や戦略に関する提案を採用する場合は、妥当性の検証も欠かせません。必要に応じて専門部署によるフィードバックや製品のテストなどを組み合わせることで、より精度の高い意思決定につなげられます。

AIはあくまで補助ツールとして位置づけ、必要なプロセスを欠かさない

AIは情報収集や壁打ちの場面で強力な補助役となりますが、最終的な意思決定は人間が行うことが原則です。顧客インタビューや実際のテストなど、現場のリアルな声をつかむ作業はAIでは代替できません。こうした人間ならではのプロセスを重ねることが、事業の精度を高めます。

AIが生成した事業計画はあくまで「たたき台」と捉え、自社の強みや現場でのヒアリング結果を加えながら、自分たちの言葉で仕上げていきましょう。また、AIの出力をもとに下した判断や実行の責任は、最終的に人間・組織が担う点も、運用上の大前提です。

Nenoaなら、セキュアなAI活用環境をスピーディーに構築できる

機密情報を扱う新規事業では、コンプライアンスや情報漏えいのリスクがネックになりがちです。そこで活用できるのが、社内ネットワークに安全なAI利用環境を構築できる「Nenoa」です。

入力データが外部サーバーに一切送信されず、AIの学習にも利用されないため、未公開の事業計画や個人情報といった機密性の高い情報も安心して入力できます。高い汎用性も備えるため、事業計画の壁打ちから資料作成、コーディング支援まで、新規事業で発生するさまざまな業務に対応可能です。

社内ネットワーク内で動作するため、クラウドAIのような利用量に比例したコスト増加が生じにくく、積極的にAIを活用しやすい環境を整えられます。また、電源を入れてLANに接続することで即日利用でき、大掛かりなサーバー設備や専門的な設定作業は必要ありません。サービス・機能の詳細や活用例については、Nenoaの紹介ページをご覧ください。

安全なAI活用環境が、新規事業の推進力を高める

AIは、新規事業の立ち上げにおけるアイデア出しやリサーチ、仮説検証、資料作成など、さまざまなシーンで活躍します。AIの特性を理解しつつ、人の手によるチェックや顧客へのヒアリングを組み合わせることで、より精度の高い意思決定につなげられます。

しかし、その恩恵を享受するためには、情報漏えいや権利侵害といったリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが欠かせません。安全性の高いAIツールの選定とファクトチェックを徹底しながら、新規事業の推進力としてAIを最大限に活かしていきましょう。

また、セキュアなAI環境の構築についてお悩みの方は、TDCソフトにお気軽にご相談ください。セキュリティを最優先したい企業には、社内に安全なAI環境を構築する「Nenoa」もおすすめです。

お問い合わせ