UXピラミッドとは?役割や階層、チェックリスト、活用手順を紹介!
Webサイトや業務システムを見直しても使いにくい印象を与えるのは、UX設計の優先順位を誤っていることが原因の一つとして挙げられます。
この問題を解決するフレームワークが、UXピラミッドです。
UXピラミッドは、商品やサービスが満たすべきニーズを段階的に設計することで、UX改善の抜け漏れを防ぐ考え方です。
本記事では、UXピラミッドの定義や役割、6つの階層を紹介します。
また、実務で使えるチェックリストや活用手順など、実践に役立つ情報も解説します。
UXピラミッドとは?
UXピラミッドとは、ユーザー体験(UX)を下位レイヤーから順に積み上げて設計する考え方を示したフレームワークです。
心理学者マズローの欲求階層説をもとに、UX分野ではアーロン・ウォルターにより提唱されました。
機能性や信頼性など基本的なニーズを整えたうえで、使いやすさや心地良さ、価値などの高次のニーズを段階的に追求していく点が特徴です。
UXピラミッドでは、下位レイヤーが満たされていない状態で上位の体験を提供しても、ユーザー満足度は十分に向上できないと考えられています。
感覚に頼るUX改善ではなく、改善施策の優先順位を整理し、構造的・段階的にUXを設計したい場合に有効なフレームワークです。
UXピラミッドと他のフレームワークとの違い
以下では、UXピラミッドとよく混同されるUXハニカムとUXデザイン5段階モデルとの違いを紹介します。
UXハニカム
UXハニカムは、良いUXを有用性・使いやすさ・見つけやすさ・好ましさ・アクセス性・信頼性・価値の7つの構成要素に分解して捉えるフレームワークです。
各要素は相互に影響し合う関係にあり、サービスが価値あるものになるためには、すべての要素をバランス良く満たす必要があると考えられています。
UXハニカムは、UX要素の充足・不足を確認するための評価軸として機能します。
一方、UXピラミッドはUX改善の優先度を判断する際の評価軸です。
両者は補完関係にあり、UXハニカムで課題を洗い出し、UXピラミッドで改善の優先順位を決めることで、再現性の高いUX設計が実現します。
UXデザイン5段階モデル
UXデザイン5段階モデルは、UXデザインのプロセスを戦略・要件・構造・骨格・表層の5つのレイヤーで捉えるフレームワークです。
どのようなプロダクトを、どの手順で設計・実装していくかという開発プロセスを体系化したものです。
一方でUXピラミッドは、ユーザーがプロダクトから得る体験の質に焦点を当てています。
満たされている体験レベルや、現状のUXにおける課題を整理するためのフレームワークです。
両者は役割が異なるため、組み合わせて活用されます。
UXデザイン5段階モデルの戦略フェーズで、UXピラミッドのどのレベルを目指すかを定義すると、要件定義や設計の方向性を明確にできます。
UXピラミッドの役割
以下では、UXピラミッドの主な役割を紹介します。
良いUXの定義
UXピラミッドは、良いUXを定義する際に、定量と定性の両面から考える際に役立つフレームワークです。
下層レイヤーと照らし合わせると、エラー率や操作時間などの定量指標に基づき、UXの良さを確かめられます。
一方で上層レイヤーでは、ユーザーの満足感や納得感など体験価値の定性的な評価が可能です。
結果として、数字だけでは見えない部分も含め、多角的な視点で良いUXを定義できます。
また、UXを指標で評価できると、関係者間でUXに対する認識をそろえられます。
その結果、UX改善の成果を経営視点で測定でき、投資判断や意思決定もより適切に実施できます。
UXデザインの優先付け評価
UXピラミッドの階層構造は、改善施策の優先判断を客観的に行うための基準としても有効です。
UXピラミッドで改善施策の優先順位を決める際に活用すると、各施策がどのUXレベルの課題に対応し、どのKPIに寄与するかを整理できます。
そのため、下位レベルの未解決課題を放置したまま、上位レベルの施策に着手する判断ミスの防止が可能です。
その結果、限られた開発・運用リソースを投資対効果の高い改善施策に集中的に充てられ、UX改善を効率的に進められます。
UXピラミッドを構成する6つの階層
以下では、UXピラミッドを構成する6つの階層を下層から順番に解説します。
レベル1:機能的である(Functional)
機能的であるとは、システムやサービスが本来果たすべき機能を、エラーなく確実に実行できる状態を指します。
業務システムやサービスにおいて、処理が途中で止まらず、取引や操作が最後まで成立するように機能を設計・開発します。
機能性を担保するためには、開発者視点だけで判断せず、実際の運用シナリオを想定した検証が重要です。
特に、同時アクセスや大量データ処理など、特定条件下でのみ発生するエラーを見逃さないようにしましょう。
機能レベルを軽視すると、利用率の低下や業務停止、売上機会の損失など、致命的なビジネスリスクを招きます。
まずは、機能性を徹底的に作り込むことで、ビジネスリスクを回避しつつ、UX改善を確実に進められます。
レベル2:信頼できる(Reliable)
信頼できるとは、入力情報や操作のセキュリティが確保されている前提で、システムが常に正確で一貫した結果を返し、安心して使える状態を意味します。
主な目的は、操作結果や表示内容、システム本体のセキュリティに対する不安を取り除くことです。
ユーザーの確認作業や問い合わせの手間をなくし、業務や操作を安心して進められる状態を目指します。
例えば、オンラインバンキングでは、正確な残高表示や、多要素認証や不正アクセス検知などのセキュリティ機能が整っていることが不可欠です。
これらが欠けていると、使いやすくても信用できないサービスと認識され、システムの信用が損なわれます。
したがって、信頼できる状態は継続利用や定着率を決める要素です。
長期的に信用されるためには、整合性や一貫性のある表示・操作に加え、適切な認証・権限管理などのセキュリティ機能など、ユーザーの誤解を招かない設計が欠かせません。
レベル3:使いやすい(Usable)
使いやすいとは、ユーザーが迷わずに目的を達成できる状態です。
実際の使い勝手を左右する重要なレイヤーです。
配車アプリでは、行き先の入力や配車依頼などの一連の操作を、最小限のステップで完了できるUIが求められます。
例えば、現在地の自動取得により、初めて利用するユーザーでも迷わず操作できることが理想です。
使いやすさを重視しないと、操作ミスが増加して業務効率や利用率が低下し、結果として使われないシステムになりかねません。
そのため、ユーザーがスムーズに操作できるかという視点で、UIや操作フローを見直し、実際の利用シーンに即した検証が必要です。
レベル4:便利である(Convenient)
便利であるとは、ユーザーが意識的な操作をせずに、状況や文脈に応じて快適に目的を達成できる状態のことです。
ユーザーの操作や思考の負担を減らすことで、体験の快適さを高め、継続利用を促進する目的があります。
業務システムにおいては、よく使用する機能のショートカット表示や、過去の操作履歴に基づく入力補完が、レベル4に該当します。
便利である状態は、システムの効率性とユーザー満足度を高める要素です。
単なる使いやすさにとどまらず、何もしなくても助けてくれるUXを設計できるかがポイントです。
レベル5:楽しい・心地よい(Pleasurable)
楽しい・心地よいとは、ユーザーがシステムの使用中にポジティブな感情を抱き、「また使いたい」と感じる体験を提供できている状態です。
システムへの愛着を生み、リピーターやファン化の促進を主な目的としています。
具体例としては、達成感を演出する進捗表示や称賛メッセージが典型的です。
楽しさや心地良さを設計する際は、見た目や演出を目的化しないように注意が必要です。
業務効率や操作性を損なうほどの過度なアニメーションや演出は、かえってストレスの原因となり、UXが低下します。
そのため、実用性を土台に感情価値を設計すると、ユーザーに選ばれ続けるシステムやアプリを実現できます。
レベル6:価値がある(Meaningful)
価値があるとは、サービスやシステムの体験が、ユーザー自身の価値観や目的と結びつき、「自分に意味がある」と感じられる状態です。
例えば、文化体験型サービスでは、地域の歴史や価値観に触れられる体験を通じて「参加して良かった」と感じてもらえます。
このような体験は、下層レイヤーの効率性や操作性では代替できず、深い満足感や記憶に残るUXとして評価されます。
一方、システムやサービスの価値を意識せずに設計すると、価格や機能でしか比較されなくなり、他サービスとの差別化ができません。
その結果、ファンが育たず、ブランド価値が長期的に向上しません。
価値がある状態を達成できると、UXをブランド価値や社会的意義へと昇華させます。
ユーザーの価値観と結びつく体験を設計できたとき、UXは単なる利便性や楽しさを超え、長期的な信頼と共感を生み出します。
UXピラミッドを活用したUX品質のチェックリスト例
以下の表は、UXピラミッドを活用したUX品質のチェックリストです。
| レベル | 主なチェック項目 |
|---|---|
|
レベル1:機能的である |
□ 必要な機能が欠けることなく実装されている |
|
レベル2:信頼できる |
□ データの正確性・一貫性が担保されている |
|
レベル3:使いやすい |
□ 初見でも操作の流れが理解できる |
|
レベル4:便利である |
□ 利用者の行動・履歴を活用した支援がある |
|
レベル5:楽しい・心地よい |
□ 操作に対する適切なフィードバックがある |
|
レベル6:価値がある |
□ 利用者の目的・価値観と結びついている |
自社のプロダクトが、各階層でどのような状態にあるかを客観的に評価するためにご活用ください。
UXピラミッドを活用したUX改善プロセス
UXピラミッドは、具体的な改善活動のプロセスにも応用できます。
以下のステップに沿って、体系的にUX改善を進めていきましょう。
1.現状のUXレベルを評価
まず、現在のプロダクトや業務システムのUXが、UXピラミッドの6階層のうち、どこまで満たせているかを客観的に評価します。
評価の際は、チェックリストやユーザーインタビュー、アクセス解析・利用ログを活用し、定性データと定量データの両面から確認が必要です。
例えば、操作ミスはレベル3(使いやすさ)、再訪率はレベル6(価値がある)など、UXの評価指標と階層を対応付けておくとスムーズに評価できます。
現状を把握する際は、なんとなく良さそうなどと曖昧な印象論ではなく、データとユーザーの意見の両面から評価することが重要です。
2.改善の優先順位を決定
続いて、評価結果に基づき、優先的に改善するレイヤーを決定します。
もっとも下位で満たされていない課題がボトルネックになるため、下位の階層にある課題ほど優先度は高くなります。
例えば、使いにくい(レベル3)と楽しくない(レベル5)という課題が同時に見つかった場合、まずは使いやすさの改善から着手すべきです。
3.改善施策を設計
改善するレイヤーの優先順位が確定したあとは、具体的な改善施策を設計します。
例えば、処理が途中で止まる場合(レベル1の課題)は、新機能の追加やUI改善を行う前に、エラー修正や欠落機能の補完を最優先で実施しましょう。
また、画面ごとに商品の値段が異なる場合(レベル2の課題)は、データ連携の見直しなどを通じて、ユーザーが安心して操作できるように修正します。
改善施策を検討する際は、ペルソナやカスタマージャーニーマップを参照し、ユーザー視点での設計を心がけることが大切です。
4.改善後のUXを再評価
施策を実装したあとは効果測定です。
具体的には、A/Bテストやユーザビリティテスト、NPS(ネットプロモータースコア)調査を活用し、施策実行前後のUXを比較します。
この際、今回の施策で狙っていたUXレベルを満たせたか、改善の過程で新たな使いにくさや副作用が出ていないかの確認が必要です。
定量指標と定性情報の両面から評価し、得られた結果を次の改善サイクルに反映させることで、UXを着実に高めましょう。
5.上位レベル(4~6)へ拡張
下位レベル(1~3)が安定した段階で、上位レベルの見直しに取り組みます。
競合との差別化を図り、ユーザーに愛されるサービスやシステムを育てるうえで重要なステップです。
例えば、操作の自動化でより便利にできないか、プロダクト独自の価値を体験してもらえているかという観点で、チームで意見を出し合います。
この際、ユーザーの利用シーンや感情の変化を想定しながら、UXピラミッドの各上位レベルに対応するアイデアを洗い出すと効果的です。
6.チームや関係者と共通認識を構築
最後に、UXピラミッドをチーム内や関係者間で共有し、共通認識として定着させます。
例えば、現在は信頼性の課題(レベル2)を重点的に改善しているなど、現状と目標をUXピラミッド上で共有すれば、認識のズレを防止可能です。
UXピラミッドを共通言語として活用すると、立場の異なる関係者間でも施策の優先順位を統一でき、UX改善をスムーズに進められます。
UX改善なら「TDCソフト」にお任せ
UX改善において自社でのリソース確保が難しい場合や、より客観的な第三者の視点を取り入れたい場合は、TDCソフトにご相談ください。
以下では、当社が提供するUXデザインサービスと成功事例を紹介します
UXデザインサービスの特徴
当社が提供するUXデザインサービスでは、以下のようなサービスを通じて、UI/UXデザインに取り組む企業を多角的に支援しています。
| 支援内容 | 概要 |
|---|---|
|
新規サービス企画支援 |
新規サービス検討やプロダクト構想をサポートし、HCD(人間中心設計)思考を踏まえた企画立案を支援 |
|
既存サービス改善支援 |
既存プロダクトの課題を可視化し、ユーザー体験向上に向けたカイゼンプランを策定 |
|
デザイン内製化支援 |
デザイン組織の立ち上げや体制構築を支援し、企業が自走してデザインを回せる状態を実現 |
|
UX/UIデザイン作業支援 |
画面設計やUI作成、プロトタイピングなど、UX/UIデザインを実務レベルで支援 |
|
研修・ワークショップ |
デザイナー・非デザイナー向けに、UX思考やデザインプロセスを習得するための研修を提供 |
当社では、顧客自身が継続的に改善を行えるよう、プロセスを仕組化し、自走できる体制構築まで支援が可能です。
成功事例
IT技術集団AEVICの若手開発チームは、UXデザインの知識不足により、アプリ改善や企画を体系的に進められない課題を抱えていました。
そこでTDCソフトは、ヒューリスティック評価を実施し、ユーザビリティ課題を重要度付きで可視化するとともに、具体的なカイゼン案を提示しました。
さらに、UXデザイン基礎研修を提供し、実践的なUX思考を身につけられる体制を構築しました。
支援の結果、チームは既存アプリのカイゼンだけでなく、ユーザー中心の新規アプリ企画にも自走して取り組めるようになりました。
まとめ:UXピラミッドを活用し、ユーザー体験を効率良く高めよう
UXピラミッドは、機能性や信頼性、使いやすさ、価値などの6つのニーズが積み上がった構造で、UX改善の優先順位付けに役立つフレームワークです。
特にWebサイトや業務システム、企業向けアプリのような、継続利用や業務効率が重視されるUX改善において活用効果をもたらします。
他のフレームワークと組み合わせつつ、設計後も継続的に活用すると、場当たり的な改善を防ぎ、ユーザーに選ばれ続けるUXを提供できます。
自社のUXに課題がある場合は、TDCソフトまでお気軽にご相談ください。
既存サービスのカイゼンから内製化、研修まで幅広く支援いたします。