この記事の内容
ServiceNowを導入する企業の多くは、「自社業務に最適化された理想のIT基盤」を目指してプロジェクトをスタートさせます。
現場要件を丁寧に拾い上げ、時間とコストをかけてカスタマイズを重ねた結果、完成直後は高い満足感を得られるケースも多いでしょう。
しかし数年後、そのシステムは本当に“期待通り”に機能しているでしょうか。
近年、多くの企業で見られるのが、過度なカスタマイズによる複雑化と、その反動としての「標準機能(OOTB:Out of the Box)への回帰」という動きです。
本稿では、なぜそのような判断に至るのか、そしてそれが決して後退ではなく、むしろServiceNowの価値を最大化する選択である理由を整理していきます。
カスタマイズのリスクと標準機能(OOTB)の価値
過度なカスタマイズが招く問題
標準機能(OOTB)とは、ServiceNowが提供する標準機能群で、世界中のベストプラクティスを反映した設計が特徴です。
ServiceNowは柔軟性が高く、ローコードで迅速に開発できます。しかし、この柔軟性が過度なカスタマイズを招き、結果として運用負荷を増大させるケースが少なくありません。
設計思想が散在し、全体像を把握できる人が限られる、業務部門とIT部門で認識がズレるなど、スパゲッティ化したシステムは障害対応や改善検討のたびに大きな負荷となります。
<よくある問題点>
・ 設計思想が散在し、全体像を把握できる人が限られている
・ 業務部門、IT部門、ベンダー間で認識がズレている
・ 「なぜこの仕様なのか」を説明できない箇所が増えている
標準機能(OOTB)で回避できるリスク
一方、標準機能(OOTB)はこうしたリスクを回避するために設計されており、シンプルで保守性の高い構成を維持できます。標準機能(OOTB)を軸にした設計は、長期運用を見据えた安定性と拡張性を確保するための有効な手段です。
バージョンアップと運用効率
イベント化するバージョンアップ
ServiceNowは年1回のバージョンアップを前提としたサービスです。本来なら新機能をスムーズに取り込めるはずですが、カスタマイズが多い環境では影響調査やテスト工数が膨らみ、数か月規模のプロジェクトになることもあります。
<カスタマイズ過多の影響>
・ 影響調査の範囲が広がり、作業が長期化する
・ テスト工数が膨らみ、数か月規模のプロジェクトになる
・ 新機能が既存カスタムと干渉し、活用できない
結果として、バージョンアップは「価値向上の機会」ではなく「毎年必ず発生する重たいイベント」へと変わってしまいます。
標準機能(OOTB)設計のメリット
標準機能(OOTB)を中心に設計すれば、アップグレードの負担を大幅に軽減できます。これはIT投資効率を高め、運用負荷を抑えるための重要なポイントです。
標準回帰は後退ではない
標準機能(OOTB)の強み
「現状のカスタマイズを維持するのは現実的ではない」と判断し、標準機能(OOTB)への回帰を選択する企業が増えています。一見すると後退に見えますが、実際には長期的な価値を守る前向きな選択です。
<標準機能(OOTB)の特長>
・ アップグレードに強い
・ 安定性と拡張性を両立
・ 運用負荷を最小化しやすい
標準機能(OOTB)は世界標準のベストプラクティスを反映し、ServiceNow本来の価値を継続的に引き出せる基盤を整えます。
DXの本質と業務見直し
業務をそのまま写さない
多くのカスタマイズが必要になる背景には「現行業務をそのままシステムに置き換えたい」という発想があります。しかし、DXの本質は単なる自動化ではありません。業務改革とシステム導入を一体で考え、ムダを減らす視点が不可欠です。
<見直すべき視点>
・ その業務は本当に必要なのか
・ 工程を減らせないか
・ 人が介在すべき判断はどこか
標準機能(OOTB)を活用しながら業務を見直すことで、複雑さをシステムに持ち込まず、運用をシンプルに保てます。
UX視点と持続性
使い続けるための設計
今後重要なのは「どこまで作り込むか」ではなく「どう使い続けるか」です。UXと持続性を意識した設計がなければ、どれほど高機能なシステムでも使いこなせない存在になってしまいます。
<確認すべきポイント>
・ 現場が迷わず使える導線になっているか
・ 運用担当者が無理なく回せる設計か
・ 将来の変更や拡張に耐えられるか
標準機能(OOTB)をベースに、現場が迷わず使える導線と、将来の変更に耐えられる設計を整えることが重要です。
引き算の判断が価値を分ける
標準とカスタマイズのバランス
どこまで標準を使い、どこをカスタマイズするのか。この判断は技術力だけでは導き出せません。TDCソフトは、標準機能を最大限活かした導入設計と、長期運用を前提としたカスタマイズの勘所を蓄積しています。
「作れるか」ではなく「作るべきか」を一緒に考えることが、運用負荷を抑え、投資対効果を高める近道です。
標準回帰は“後退”ではなく、持続可能性への前進
ServiceNowは、導入後に価値を発揮し続けられるかどうかで評価が大きく分かれるプラットフォームです。
ここまでの内容を振り返ると、押さえておきたいポイントは次のとおりです。
・過度なカスタマイズは長期運用のリスクになる
→複雑化した設計は、障害対応やバージョンアップ時に大きな負荷を生みます。
・標準機能(OOTB)は、持続性と拡張性の基盤
→世界標準のベストプラクティスを反映した設計により、アップグレードや運用を安定化できます。
・DXの本質は「業務をそのまま写さない」こと
→業務改革とシステム導入を一体で考え、ムダを減らす視点が不可欠です。
・導入前に「どこまで標準を使うか」を決める
→作り込みの範囲、UX視点、将来の拡張性を踏まえた設計方針が、投資対効果を左右します。
TDCソフトでは、こうした判断を支援する「標準を活かした導入設計」資料をご用意しています。検討初期の情報整理や簡易見積も可能です。
また、
「自社の場合、標準とカスタマイズのバランスはどう考えるべきか」
「初期導入時のスコープ感を把握したい」
といった検討を進める段階では、簡易的な整理や概算のご相談も可能です。
↓検討段階での簡易見積や、ご相談はこちら↓
ServiceNowを“入れること”が目的にならないように。
長く使い続けられる基盤を選ぶための第一歩として、ぜひご活用ください。




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