ServiceNow コラム

企業のITインフラやアセットが複雑化・多様化する中で、CMDB(Configuration Management Database)は、それらの複雑な関係性や構成情報を一元的に管理し、ITサービス管理(ITSM)の基盤として重要な役割を果たしています。
ServiceNowのCMDBは、セキュリティ対応やインシデント対応の場面において、非常に有効に機能します。
本コラムでは、ServiceNowのCMDBがセキュリティ対応およびインシデント対応をどのように最適化するのかに焦点を当てて、詳しく解説していきます。

CMDBとセキュリティ対応の連携

サイバー攻撃やセキュリティ上の脅威が増加している現代においては、セキュリティインシデントに迅速かつ的確に対応することが極めて重要です。
ServiceNowのCMDBは、セキュリティインシデントの発生から対応までの一連のプロセスを支援し、潜在的な脆弱性やリスクに対して迅速に対応できるようサポートします。

1. セキュリティホールの即時特定

セキュリティ対応においては、攻撃対象や影響を受けるシステムを即座に把握することが非常に重要です。
ServiceNowのCMDBには、すべての構成項目(CI)とその関連情報が一元的に管理されています。
CMDBを活用することで、該当するCIの依存関係やシステムの詳細情報をすぐに確認できるため、被害の拡大を防ぐための迅速な対応が可能になります。
その結果、セキュリティリスクの軽減が期待できます。

2. セキュリティインシデントの影響範囲の迅速な特定

CMDBのもう一つの大きな利点は、セキュリティインシデント発生時に、その影響範囲を迅速に特定できる点です。
たとえば、あるアプリケーションに脆弱性が見つかった場合、そのアプリケーションに関連する他のシステムや構成項目(CI)にも影響が及ぶ可能性があります。
ServiceNowのCMDBを活用すれば、CI間の依存関係を把握し、影響範囲を直感的に可視化できるため、被害が及ぶ可能性のある範囲を正確に特定し、迅速に対策を講じることが可能です。

3. 監査・コンプライアンス対応の強化

セキュリティ対応においては、監査やコンプライアンスの要件を満たすことも重要です。
CMDBを活用することで、システムや構成項目(CI)の変更履歴やインシデント対応の記録を一元的に管理できます。
過去の対応経緯や変更内容を正確に把握できるため、監査やコンプライアンスに対する証跡としても有効です。
これにより、監査対応やコンプライアンス遵守の効率が向上し、適切な対応履歴を提示することが可能になります。

CMDBとインシデント対応の連携

CMDBは、インシデント対応においても重要な役割を担っています。
障害が発生した際には、原因の特定、影響範囲の把握、そして迅速な解決が求められます。
CMDBは、原因の特定や影響範囲の把握に必要な情報を提供し、迅速な対応を可能にします。

1. 障害の原因と影響分析

インシデント対応の初期段階で最も重要なのは、障害の原因を突き止めることです。
ServiceNowのCMDBを活用すれば、影響を受けた構成項目(CI)の依存関係を分析し、障害の原因となっている箇所を特定することが可能です。
たとえばネットワーク障害が発生した場合でも、関連するサーバー、アプリケーション、ネットワーク機器などがCMDBに登録されているため、障害の発生源をスムーズに特定できます。

2. ダウンタイムの最小化と迅速な対応

例えば、あるサーバーに障害が発生すると、そのサーバーに依存する他のシステムやサービスにも影響が及びます。
CMDBを参照すれば、そのサーバーに依存するシステムを特定でき、ダウンタイムの影響を考慮して適切な対応策を迅速に講じることが可能です。
これにより、サービス停止による影響を最小限に抑えることができます。

3. インシデントの再発防止と根本原因分析

CMDBは、インシデント対応後の再発防止にも貢献します。
インシデント対応の過程でCMDBに記録されたCIの構成情報や依存関係を参照することで、インシデントの根本原因を特定し、再発防止策を講じることができます。
過去のインシデント対応の経験を蓄積・活用できるため、将来のインシデント発生を防ぐことが期待できます。

CMDBを利用しないセキュリティ管理とインシデント管理のリスクと課題

ITインフラやシステムがますます複雑化・高度化する現代の企業にとって、セキュリティ管理とインシデント管理は大きな課題です。
多くの企業ではServiceNowのようなITサービス管理(ITSM)プラットフォームを活用し、構成管理データベース(CMDB)を基盤にインシデント対応やセキュリティ対応を行っています。
しかし、CMDBを導入していない、あるいは適切に運用していない場合には、さまざまな問題が発生します。
ここでは、CMDBを利用しない場合のセキュリティ管理とインシデント管理上のリスクや課題について詳しく説明します。

1.IT資産管理の一貫性の欠如

CMDBを利用しない場合、IT資産やシステム構成に関する情報が各部門や個別のスプレッドシート、異なるツールなどに分散管理されがちです。その結果、全体像が見えなくなり、セキュリティインシデントや障害への対応が難航する原因となります。

問題点:

・資産管理の一貫性の欠如: データが分散管理されているため、各システムやデバイスの構成を把握するための情報が統一されておらず、正確な状況把握が困難です。
・ 更新の遅延と誤り: 情報を手動で管理していると、システムの変更が適切に反映されず、古いデータに基づいて対応してしまうリスクがあります。
・影響範囲の特定が困難: 特定の脆弱性や障害が発生した際、影響を受ける資産を特定するために多くの時間と労力を費やす必要があり、対応が遅れがちになります。

2. インシデント対応の速度と精度の低下

インシデントが発生した場合、原因の特定と対処には迅速な対応が求められます。しかし、CMDBが存在しない環境では、対応の速度と精度が大幅に低下してしまいます。

問題点:

・原因の特定が困難: CMDBがあれば、インシデントが影響を及ぼした構成項目(CI)やその依存関係を可視化できます。CMDBがない場合、関連性を把握できず原因の特定に時間がかかります。
・手動調査のコスト増加: インシデント発生時には、関係するシステムやデバイスを一つひとつ確認しなければならず、対応にかかるコストが増大します。特に環境が複雑な場合、このプロセスは非常に非効率です。
・誤対応のリスク: 原因を特定できないと、誤った対応をしてしまうリスクが高まります。

3. セキュリティリスクの増大

脆弱性管理やコンプライアンス対応において、IT資産の全体像を把握できないことは大きなリスクにつながります。

問題点:

・脆弱性への対応漏れ: CMDBがあればすべてのCIを把握でき、脆弱性に関連するシステムを特定できます。CMDBがない場合、脆弱なシステムを見落としてしまい、攻撃に対して無防備なままになる恐れがあります。
・コンプライアンス違反のリスク: 多くの業界では、IT資産の管理や変更履歴の追跡が義務付けられています。CMDBがなければ、こうした要件を満たせず、監査対応や規制遵守の面でリスクが生じます。
・対応プロセスの不統一: セキュリティインシデント発生時には、一貫した対応プロセスを確立することが求められます。CMDBがない環境では、標準化された対応プロセスを構築することが難しくなります。

4. ダウンタイムとビジネス影響の拡大

CMDBがない環境では、インシデント発生時のダウンタイムが長期化する傾向があります。影響を受けるシステムを正確かつ迅速に特定できないためです。

問題点:

・影響範囲の把握に時間がかかる: システム間の依存関係が把握できておらず、どのシステムが停止すると他のシステムに影響が及ぶのか分かりません。その結果、影響範囲の特定に時間を要し、復旧が遅れます。
・ビジネスへの影響が大きい: 対応の完了まで時間がかかるとダウンタイムが長引き、ビジネスへの影響が大きくなります。特にクリティカルなサービスやシステムが停止した場合、顧客への影響も深刻です。
・復旧作業の非効率化: CMDBがあれば、復旧プロセスでも関連するCIやシステムを考慮し、迅速に対応できます。しかしCMDBがない場合は、復旧作業が手探りとなり、時間とコストが増大します。

5. 運用の非効率と人的エラーのリスク

IT資産や構成情報を手作業で管理している場合、ヒューマンエラーが発生しやすく、運用効率の低下が顕著になります。その結果、インシデントやセキュリティインシデントへの対応が一層滞る恐れがあります。

問題点:

・データの不整合: スプレッドシートや複数のツールで管理していると、データの整合性が失われ、正確な情報を得にくくなります。
・情報更新の遅れ: 手動で情報を更新していると、最新の変更が反映されるまでに時間がかかり、現状に即した対応ができない場合があります。
・プロセスの標準化が困難: CMDBがない環境では、標準化されたプロセスを確立しにくく、インシデント対応にばらつきが生じます。

このように、CMDBを導入していないとセキュリティ管理やインシデント管理において多くの問題やリスクが生じます。IT資産の可視化が欠如している環境ではインシデント対応が遅れ、セキュリティリスクが高まります。ビジネスの安定と成長のためには、CMDBの導入と適切な運用が不可欠です。CMDBを活用することで、迅速かつ正確な対応が可能となり、ダウンタイムの短縮だけでなくセキュリティリスクの軽減にもつながり、ビジネスの継続性を確保できます。

CMDBの運用と管理におけるベストプラクティス

ServiceNowのCMDBを効果的に活用するためには、適切な運用と管理が欠かせません。以下では、CMDB運用におけるベストプラクティスを紹介します。

1. データの正確性と更新頻度の維持

CMDBに登録する情報は、常に最新かつ正確でなければなりません。セキュリティ対応やインシデント対応の際、古い情報や誤った情報に基づいて対応すると、新たなインシデントを引き起こしかねません。CIの変更や更新を適宜CMDBに反映し、データの正確性を維持することが重要です。

2. CIの分類と依存関係の明確化

構成アイテム(CI)を明確に分類し、その依存関係を整理しておくことで、インシデント発生時の影響範囲を正確に把握できます。また、CI同士の関係を可視化することで、インシデント対応やセキュリティ対応の際に判断がしやすくなります。

3. 自動化と統合の活用

CMDBの更新を手作業で行うのは、ヒューマンエラーのリスクを高めるうえ非効率です。ServiceNowは他のツールとも連携できるプラットフォームであり、自動化されたプロセスによってCI情報の更新やインシデント対応を行えます。また、セキュリティツールと連携することで、脆弱性や脅威の検知および対応プロセスの自動化も実現できます。

まとめ

ServiceNowのCMDBは、セキュリティ対応やインシデント対応において非常に重要な役割を果たします。
インシデントの即時対応や影響範囲の特定、再発防止といったあらゆる場面で大きな効果を発揮し、効率的な運用を可能にします。
常に正確で最新の構成情報を維持し、運用プロセスを自動化することで、セキュリティ対応とインシデント対応の質を一層高めることができるのです。