ServiceNow コラム

脆弱性対応を自動化するソフトウェア部品表(SBOM)活用術とは?

公開日
2024年11月1日
更新日
2025年9月24日

「終わらぬ対応チケットに追われ、セキュリティ対応や監査準備まで手が回らない」――。
ITサービス運用責任者が口にするこの悩みは、老朽化システムや人材不足、そして複雑化したソフトウェア構成が背景にあります。
攻撃者はサプライチェーンを狙い撃ちし、ゼロデイ脆弱性が突如として浮上する時代。対応が遅れれば、業務停止や社会的信用の失墜につながります。
この「際限なき防御戦」に打ち勝つ鍵こそが SBOM(ソフトウェア部品表) です。そして、それを ServiceNow に連携させることで、セキュリティ・運用・監査を統合的に効率化できます。
本稿ではまず「SBOMとは?」を基礎から整理し、その後に「ServiceNowと組み合わせる実践手順」をステップごとに詳解します。

SBOMとは?基礎と重要性

SBOMとは?

SBOM(Software Bill of Materials: ソフトウェア部品表)とは、ソフトウェアに含まれる全コンポーネント(ライブラリ・モジュール・依存関係)を部品表として一覧化したものです。
いわば「ソフトウェアの栄養成分表示」であり、何が含まれているかを正確に把握できます。

SBOMがなぜ必要か?

SBOMが注目される理由は、その多面的な効用にあります。第一に、セキュリティ強化の観点です。たとえば特定のライブラリに脆弱性が発覚した場合、SBOMがあれば影響範囲を即座に特定でき、緊急対応の遅れを防げます。次に、コンプライアンス対応の領域でも有効です。オープンソースのライセンス違反や各種規制違反は監査や取引上のリスクにつながりますが、SBOMを通じて事前に把握・管理することで、法的リスクを最小限に抑えることができます。さらに、透明性の確保も大きな利点です。ソフトウェアの構成要素を正しく示すことは、顧客やパートナーに対して「安全性と信頼性を担保している」という強いメッセージとなります。そして、日常的な運用効率の向上も欠かせません。アップデートや障害が発生した際、依存関係を即座に把握できることで復旧の迅速化につながり、結果として運用チームの負担軽減やサービス品質の安定化にも寄与するのです。

SBOMの背景

米国大統領令(2021年)でSBOMの政府調達必須化が進み、欧州や日本でも同様の動きが拡大。
Gartnerも「2025年までに重要インフラ組織の60%がSBOM標準化を導入」と予測しています[¹]。

SBOMがなぜ今、必要なのか?

ソフトウェア開発の現場では、日々大量のオープンソースや外部ライブラリが組み込まれています。利便性やスピードを優先した結果、いざ脆弱性が見つかると「どのシステムに影響するのか」を把握するだけで数日を要する――そんな声を現場からよく聞きます。
SBOMとは、ソフトウェアに含まれるコンポーネントを「部品表」として一覧化する仕組みです。かつて製造業が部品表を用いて品質を保証してきたように、デジタルの世界でもSBOMは信頼性を支える基盤になりつつあります。
その存在意義は一言で言えば“透明性”。どの部品が使われ、どのバージョンが組み込まれているかを把握することが、セキュリティとコンプライアンスの両面で必須になっているのです。

経営に直結する四つの効用

SBOMの効用は単なるセキュリティ対策にとどまりません。
まず、特定ライブラリに脆弱性が発覚した際に影響範囲を即座に特定できることは、企業にとって致命的なダウンタイムを避ける意味を持ちます。
次に、OSSライセンスの違反や規制違反を未然に防げる点も重要です。監査や契約交渉で求められる「法的な安心感」を、SBOMは確実に裏付けます。
さらに、顧客やパートナーに対して「何を使っているかを正直に示せる」ことは、透明性そのものが信頼の証明となります。信頼を得た企業は、調達や提携の場で優位に立つことができるでしょう。
そして忘れてはならないのが運用効率の改善です。障害発生時に依存関係を素早く把握できれば、調査や復旧のスピードが格段に上がり、運用チームの負担も大幅に軽減されます。

広がる国際的な潮流

アメリカでは2021年の大統領令をきっかけに、政府調達でSBOMの提出が義務化されました。欧州や日本でも同様の議論が加速し、規制だけでなく業界標準としての定着が始まっています。
Gartnerは「2025年までに重要インフラ組織の60%がSBOMを標準化する」と予測し[¹]、IDCは「SBOM導入企業のセキュリティ投資ROIが平均30%向上する」と指摘しています[²]。もはや一部の先進企業だけの話ではなく、あらゆる組織が避けて通れない課題になっているのです。

おわりに

SBOMは、単なる技術トレンドではなく、企業の信頼と持続可能性を守るための“共通言語”になりつつあります。透明性を確保し、脆弱性やコンプライアンス違反のリスクを減らし、運用効率を高める――そのどれもが、ITサービス運用責任者にとって喫緊のテーマです。
いま動くかどうかで、将来の負荷は大きく変わります。セキュリティだけでなく、経営そのものを支える基盤として、SBOMの導入と活用を真剣に検討する時期に来ているのです。

外部出典
[¹]Gartner「Innovation Insight for SBOMs」2024年5月
[²]IDC「Worldwide Software Supply Chain Security 2024」2024年8月