ServiceNow コラム

IT資産管理と構成管理でMTTR(平均修復時間)を短縮

公開日
2024年5月15日
更新日
2025年11月11日

現代の企業運営において、資産管理は非常に重要な役割を果たしています。資産管理は企業の効率的な運営、コスト削減、リスク管理、そして戦略的な意思決定に直結します。

特に、情報技術の進化に伴い、CMDB(Configuration Management Database)、ITAM(IT Asset Management)、HAM(Hardware Asset Management)、SAM(Software Asset Management)といったシステムの導入が不可欠となっています。本稿では、資産管理の重要性とそれに伴う課題について詳述し、CMDB、ITAM、HAM、SAMの役割について考察します。

資産管理の重要性

1. コスト削減

資産管理は企業のコスト削減に直結します。資産の適切な管理を行うことで、無駄な購入や重複した資産の保有を避けることができます。
また、老朽化した設備や不要なソフトウェアライセンスの削減によって、運用コストを削減することができます。

2. 効率的な運用

資産管理は、資産の使用状況や寿命を把握し、効率的な運用を実現します。これにより、設備のダウンタイムを最小限に抑え、生産性を向上させることができます。
また、資産のメンテナンススケジュールを適切に管理することで、予防保全を行い、予期せぬ故障を防ぐことができます。

3. リスク管理

適切な資産管理はリスク管理にも寄与します。特に、IT資産に関しては、セキュリティリスクやコンプライアンスリスクの低減が重要です。資産の所在や状態を正確に把握することで、不正アクセスやデータ漏洩を防止し、法規制を遵守することができます。

4. 戦略的意思決定

資産管理は戦略的意思決定にも役立ちます。資産の使用状況やパフォーマンスデータを分析することで、新たな投資や資産のリプレースのタイミングを見極めることができます。
また、市場の動向や技術の進化に対応した柔軟な資産計画を策定することが可能となります。

IT資産管理と構成管理の違い

IT管理の領域において、IT資産管理と構成管理は重要な役割を果たします。しかし、両者は異なる目的とアプローチを持っています。本稿では、IT資産管理と構成管理の違いを「資産の購入から破棄までのライフサイクル」と「サービスを運用していくための管理」の観点から考察します。

IT資産管理とは?

IT資産管理(ITAM/SAM/HAM)とは、資産ライフサイクルのことを指します。統括管理し、契約・在庫・使用率・減価償却まで可視化します。

【資産管理の目的】
資産管理は、企業の全てのIT資産のライフサイクルを効率的に管理することを目的としています。これには、資産の購入、保有、メンテナンス、廃棄までの全プロセスが含まれます。資産管理は主に以下の点を管理します。

・資産の購入: 必要な資産の調達と、購入にかかるコストの管理
・資産の維持: 資産の使用状況やメンテナンスを管理し、資産のパフォーマンスを最適化する
・資産の廃棄: 寿命を迎えた資産の適切な廃棄方法を計画し、実施する

【資産管理で行うこと】
資産管理は主に以下の活動を含みます。

・資産の台帳管理: 全ての資産を台帳に登録し、資産の状態や場所、使用者を追跡します。
・ライフサイクル管理: 資産の購入から廃棄までの全てのフェーズを管理し、資産の寿命を最大限に活用する
・財務管理: 資産のコストを管理し、資産の価値を評価する

【資産管理をするメリット】
資産管理のメリットは以下の通りです。

・コスト削減: 不要な資産の購入や重複を避け、資産の最適化を図ることでコスト削減が可能に
・資産の有効活用: 資産の使用状況を把握し、最適な使用方法を見つけることで、資産の有効活用を促進
・リスク管理: 資産の状態を常に把握することで、リスクを最小限に抑え、適切なメンテナンスを実施

構成管理とは?

構成管理とは、サービスの安定運用を目的に、CI(構成アイテム)と依存関係をCMDBで一元化します。最短経路で影響分析と初動を切るための“運用の地図”です。

【構成管理の目的】
構成管理は、ITサービスの安定した運用を目的としています。サービスの構成要素(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク機器、ドキュメントなど)を一元管理し、それらが適切に組み合わさって機能することを保証します。具体的には、以下の点を管理します。

・CIの登録と追跡: 各構成要素の状態と関係性を把握し、変更が加えられた際に影響範囲を特定します。
・変更管理: 変更が行われる際の影響分析、承認プロセス、変更の実行とその後のレビューを通じて、サービスの安定性を維持します。

【構成管理で行うこと】
構成管理は主に以下の活動を含みます。

・CIの識別と分類: 全ての構成要素を識別し、適切に分類する
・CMDB(Configuration Management Database)の維持: 構成アイテムとその関係性をデータベースに記録し、常に最新の情報を維持する
・監査と報告: 構成アイテムの状態を定期的に監査し、報告書を作成して運用状況を把握する

【構成管理をするメリット】
構成管理のメリットは以下の通りです。

・サービスの安定性向上: 変更が行われた際の影響を事前に把握することで、サービスのダウンタイムを最小限に抑えられる
・問題解決の迅速化: 問題が発生した際に、関連する構成要素を迅速に特定できるため、問題解決がスムーズに進む
・規制遵守: 構成管理は、ITガバナンスや規制遵守をサポートし、コンプライアンスリスクを低減する

IT資産管理×構成管理でできること

・MTTR(平均修復時間)短縮: 構成変更と資産使用率の相関が見え、障害発生から復旧までの時間を短縮化できる
・コスト/リスク低減: CMDBの依存関係とSAMの使用データを突合することで未使用ハイグレードの棚卸しが容易になり、更新判断が迅速化
・変更成功率の向上: 変更申請時にCIの最新情報と影響経路が保証され、自己誘発障害の回避につながる

構成管理と資産管理は、どちらも企業のIT運営において重要な役割を果たしますが、それぞれ異なる目的とアプローチを持っています。

構成管理はサービスの安定運用を重視し、構成アイテムの管理と変更管理に焦点を当てます。一方、資産管理は資産のライフサイクル全体を管理し、購入から廃棄までのプロセスを効率的に管理します。両者を統合的に活用することで、企業は効率的かつ効果的なIT運営を実現することができます。

ServiceNowの資産管理ソリューション

企業のIT運営において、資産管理は極めて重要な役割を果たします。資産管理の効率化と最適化は、コスト削減、運用効率の向上、リスク管理に直結します。

ServiceNowは、資産管理のための包括的なソリューションを提供しており、特にハードウェアとソフトウェアに特化した機能を備えています。本稿では、ServiceNowのITAM、SAM、HAMの各ソリューションについて詳述し、その利点を考察します。

ITAM(IT Asset Management:資産管理の基盤機能)の概要

ITAM(IT Asset Management:資産管理の基盤機能)は、企業の全てのIT資産を一元管理する基盤機能を提供します。これにより、資産の購入、保有、使用、廃棄までの全ライフサイクルを効率的に管理することができます。

【ITAMの機能】
ITAMの主要な機能には以下が含まれます。

・契約管理: 資産に関連する全ての契約を一元管理し、契約期限や更新を効率的に追跡。契約の期限切れや未更新によるリスクを回避できる
・モデル管理: 資産のモデル情報を管理し、標準化された資産管理を実現。資産の購入やメンテナンスに一貫性を保つ
・倉庫転送: 資産の倉庫間移動を効率的に管理し、在庫の最適化を図る。必要な場所に迅速に資産を供給できる
・減価償却: 資産の減価償却を自動計算し、正確な財務報告をサポート。資産の価値を正確に把握し、適切な会計処理が行える
・注文管理: 資産の注文プロセスを管理し、購入から受け取りまでの全てのステップを追跡。資産調達のプロセスを効率化

SAM(Software Asset Management:ソフトウェア資産管理)の概要

SAM(Software Asset Management:ソフトウェア資産管理)は、企業のソフトウェア資産を効率的に管理するためのソリューションです。ソフトウェアライセンスの適切な管理と最適化を通じて、コスト削減とコンプライアンス確保を実現します。

【SAMの機能】
SAMの主要な機能には以下が含まれます。

・ソフトウェアライセンス計算: ソフトウェアライセンスの使用状況を自動で計算し、ライセンスの不足や過剰を防ぐ。ライセンスの適切な使用を保証し、コスト削減を図る
・ライセンス最適化: 使用していないソフトウェアライセンスの特定と最適化を行う。不要なライセンスと無駄なコストを削減し、ライセンスの効率的な使用を実現

HAM(Hardware Asset Management):ハードウェア資産管理の概要

HAM(Hardware Asset Management:ハードウェア資産管理)は、企業のハードウェア資産を効率的に管理するためのソリューションです。ハードウェアの購入、保有、使用、廃棄までの全ライフサイクルを管理し、資産の最適化を図ります。

【HAMの機能】
HAMの主要な機能には以下が含まれます。

・ハードウェアモデル管理: ハードウェアのモデル情報を管理し、標準化。ハードウェアの購入やメンテナンスに一貫性を保つ
・ITAM機能のハードウェア特化機能: ITAMの基盤機能を活用し、ハードウェア資産に特化して管理する。ハードウェア資産のライフサイクル全体を効率的に管理し、資産の最適化を図る

IT資産管理×構成管理の連携の5ステップ

ステップ1:現状の棚卸しと課題の可視化

・CMDBの更新頻度と正確性をチェック
・資産台帳(Excel等)の分散状況を把握
・SAM/HAMの使用率と契約状況を棚卸し

Tips:部門間サイロを洗い出し、更新責任者とサイクルを明確化

ステップ2:CMDBの再スコープと自動化設定

・CIの分類と依存関係の再定義
・自動発見ツールで構成情報を同期
・変更管理との連携ルールを設計

Tips:「CIモデル標準化+変更連携」でMTTR(平均修復時間)短縮を狙う

ステップ3:ITAM/SAM/HAMの導入と統合

・契約・モデル・減価償却の一元管理を開始
・SAMで使用率を日次でメータリング
・HAMで倉庫移動・廃棄プロセスを標準化

Tips:未使用ライセンスの自動検知→再配分→契約見直しでランニングコストを削減する

ステップ4:ダッシュボードとアラート連携

・CMDBとITAMの統合ビューを作成
・障害発生時にCI依存と資産使用率を同時表示
・アラート→対応優先度→変更申請の自動ルート設計

Tips:「自動化によるMTTR(平均修復時間)改善」の再現性を高める

ステップ5:運用ルールと教育

・更新責任者の明確化とサイクル設定
・部門横断の運用ガイドラインを整備
・定期レビューと改善サイクルの導入

Tips:属人化を防ぐため、更新ルールの標準化と教育が鍵

まとめ

CMDBの更新遅れ、Excel台帳の属人化、未使用ライセンスの放置など、これらはすべて、MTTR(平均修復時間)悪化と残業増加につながります。まずは現状の棚卸しから始めましょう。

ServiceNowの資産管理ソリューションは、ITAM、SAM、HAMの各機能を通じて、企業の資産管理を包括的にサポートします。これにより、ハードウェアおよびソフトウェア資産の購入から廃棄までの全ライフサイクルを効率的に管理し、コスト削減、運用効率の向上、リスク管理を実現します。

IT資産管理に関するFAQ

Q1: CMDBとit資産管理はどう使い分けたらいいのでしょうか。
A1: CMDBは「サービス運用の構成要素」、it資産管理は「資産のライフサイクル管理」。目的が異なるため、両方の視点が必要です。

Q2: ServiceNow導入にどれくらいの期間がかかりますか。
A2: 規模や既存環境によりますが、平均3〜6ヶ月で基本機能の運用が可能です。

Q3: 既存の台帳やExcel資産管理から移行できますか。
A3: できます。既存データのインポートや連携機能があり、段階的な移行も可能です。

Q4: ITAMと構成管理はどちらを優先すべきでしょうか。
A4: 両方必須ですが、老朽化やコスト圧迫が課題ならITAM、MTTR(平均修復時間)改善なら構成管理を優先することをおすすめします。

Q5: CMDB導入だけでもMTTR(平均修復時間)は改善しますか。
A5: 単独では不十分です。変更管理やインシデント管理との連携をすることで真価を発揮できます。