ServiceNow コラム

経済産業省が2020年12月に発表した「DXレポート2」によると、一部でもDXに取り組んでいる企業は、米国企業で約79%に対し、日本企業は56%にとどまっています。DXが進まない原因のひとつがシステムのサイロ化です。サイロ化は根深い問題ですが、ServiceNowなら解決できるかもしれません。DXが進まない原因と、解決方法について考えていきましょう。

DXの壁となるサイロ化とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉は、もはや説明不要と言っても過言ではありません。それだけ多くの企業がDXに取り組んでいることを示しています。DXという言葉自体は比較的最近生まれたものであり、現時点では明確な定義が定まっていないものの、一般的には「全社的な戦略のもと、ITを活用して業務やビジネスモデルを革新すること」を指します。

たとえば、メーカーのビジネスプロセスでは、商品開発部門が製品を企画・設計し、購買部門が原材料を調達、生産部門が製造を行い、営業部門が受注し、物流部門が納品するという一連の流れがあります。このような業務プロセス全体を標準化・効率化することで、生産性を大幅に向上させることが、DXの取り組みの一例です。

DXという言葉が登場する以前から、企業は継続的な業務改善に取り組んできました。しかし、その多くは部門ごとに閉じた取り組みであったのではないでしょうか。部門の枠を超えた全社的な取り組みこそが、真のDXにつながると言えます。

とはいえ、DXの実現には大きな障壁があります。その代表的なものが「サイロ化」です。サイロ化とは、部門ごとに構築されたシステムが他部門と連携せず、情報が孤立してしまっている状態を指します。これは単なるシステムの問題にとどまらず、部門間の縦割り意識(セクショナリズム)とも深く関係する、根深い課題です。特に大企業では、巨大なシステムが多数存在しており、サイロ化の解消は容易ではありません。

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」でも、既存システムが事業部門ごとに構築されており、全社横断的なデータ活用ができていないことが指摘されています。こうした課題を解決できなければ、2025年には年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性があるという、衝撃的な試算も示されています。サイロ化という障壁を乗り越えなければ、DXの本質的な推進は不可能なのです。

なぜサイロ化はDXを阻むのか

サイロ化によってなぜDXが進まないかというと、全社横断的なデータ活用ができない状態で様々な弊害が生まれているからです。その代表的なものをご紹介しましょう。

意思決定が遅れる

最近では「データドリブン」の取り組みが盛んに行われています。ビジネス上の様々な課題について、勘や経験に頼るのではなくデータの分析結果を意思決定に反映することの重要性がDXを機に改めて見直されています。
サイロ化された状態では必要な情報が必要な時に手に入らないため、データドリブンが実現できません。
例えば売上実績をタイムリーに把握できる状態と、週報でしか確認できない状態では、意思決定できるまでの時間に圧倒的な差があることは明らかです。データドリブンとDXは密接な関係があり、データドリブンできる状態を作ることがDXの基礎と言えるでしょう。

ビジネスプロセス全体を標準化・効率化できない

DXの最終的な目標は全体最適により、生産性の向上と付加価値の創出を実現することです。しかしサイロ化の状態では、部門ごとにシステムが存在しているために、部門を横断した業務の標準化・効率化が難しくなります。

例えば営業部門で請求処理をして、それと同じ内容を経理部門で入力するといったように、システム間が連携していないために、それぞれのシステムに同じ内容を入力しているという問題も散見されます。手作業や無駄な処理があれば、それだけヒューマンエラーを誘発し、ルーティン作業をするために従業員が多くの時間を割くという悪循環が生まれます。

顧客満足度が低下する

サイロ化されていると、部門間で情報を共有しにくくなります。その結果、顧客は部門ごとにそれぞれの問い合わせ窓口を使い分けなければならなかったり、サービスが提供されるまでの時間が長引いたり、といったことが発生し、顧客満足度が低下してしまうことがあります。

顧客は単一の窓口から問い合わせができ、商品の提案が必要であれば営業部門に、修理が必要であればメンテナンス部門に、即座に情報が連携されるのが理想です。しかし現実には問い合わせを受け付けた担当者が、しかるべき部門に再度依頼をかけるといったことが行われ、顧客への対応が行われるまでにタイムラグが発生しています。

サイロ化を解消、DX加速するServiceNow

サイロ化が課題といっても、解決するためにシステムを再構築するのは大きなリスクが伴います。コストとリスクを抑えてサイロ化を解消する手段としてServiceNowは非常に有効です。
実際にお客様と話をしていても、ServiceNowにより部門間で情報を共有し、部門をまたがる業務を自動化することに高い関心を持つ方が多いと感じています。
ServiceNowにはサイロ化を解消し、DXを加速する次のようなメリットがあります。

特徴① 散在しているシステムをつなぎ、組織横断でデータ活用できる

独立した複数のシステムを一元管理するのは非常に難しいのですが、ServiceNowは連携機能が充実しているため、システム間を簡単に連携でき、プラットフォーム上で一元管理することができます。
ServiceNowではシステム間の連携だけでなくワークフローを作ることができるため、部門を横断したプロセスを自動化することも可能です。

特徴② SaaS機能を活用し組織横断でワークフローを標準化できる

部門を横断した業務の標準化は生産性向上に大きなインパクトを与えます。ServiceNowでは例えば情報システムに関連する業務について、ITILに準拠したSaaSがあらかじめ用意されています。
スピーディーで安定したシステムを構築できるだけでなく、様々なSaaS機能を活用することで作業プロセスを標準化し、自動化することができます。

特徴③ プロセス全体が可視化され継続的な改善が行える

サイロ化が進むと業務プロセス全体が見えなくなり、どのように改善すればよいかわからなくなってしまいます。
ServiceNowでは部門を横断した業務プロセスの開始から終了まで単一のプラットフォーム上で可視化されるため、課題やボトルネックが明確になり、継続的な改善が行えます。

ServiceNowを使ってDXを実現するユースケース

それではServiceNowでどのようにDXを実現しているのか、ここでは3つのユースケースをピックアップしてご紹介します。

各種申請作業の効率化によるEXの向上

人材の流動性や多様性が高まり、働き方改革が進む中で、従業員がやりがいを持って生き生きと働く組織作りを重要視する企業が増えています。人材戦略には様々な打ち手がありますが、ServiceNowを活用できる領域として、従業員エクスペリエンス(EX)の向上が挙げられます。

ある企業では「従業員=カスタマー」と発想を転換し、従業員が日頃から面倒に感じている各種申請業務の負担を減らす仕組み作りにServiceNowを活用しました。
従来の申請・承認プロセスでは申請ミスがないかを複数の部門がダブルチェックし、他部門の処理・指示が間違っていないかを確認するという非効率な作業が発生していました。ServiceNow導入に伴い、フローをシンプルに再構築したことで、申請完了までの時間が1週間から数分にまで短縮することができました。

他部門の情報活用

各部門でシステムが分断すると、他の部門の情報がタイムリーに活用できないという問題が発生します。他部門のデータを活用できさえすれば、自部門の提供価値を高めることが簡単にできるケースは意外と多いものです。

あるIT企業では、ServiceNowのカスタマーサービス管理(CSM)を導入し、顧客からの問い合わせの受付から回答やインシデント対応までの業務プロセスをCSMに合わせて変更しました。プロセスを標準化し、対応依頼を自動化することで、業務を効率化しただけでなく、CSMに蓄積したデータを分析して製品の改良や新製品の開発に活用しています。

顧客への対応改善

製品ごとに顧客に対してポータルサイトを提供している場合、複数の製品を利用している顧客は複数のポータルサイトを使い分けなければならず、利便性が低下してしまいます。

ある企業では、製品ごとに多数のCRMツールと顧客ポータルサイトを運用していました。ServiceNowのカスタマーサービス管理(CSM)の導入を機に、組織全体でサポートのプロセスを標準化しました。これまでパスワードのリセットは顧客からの依頼を受けてサポート担当が手作業で対応していましたが、この一連のプロセスを自動化することで、すぐにパスワードをリセットできるようになり、顧客の利便性が向上しました。
また問い合わせだけでなく、膨大なナレッジ情報を提供し、顧客が自由に情報を探せる環境を整備しました。

以上、DXが進まない要因であるサイロ化がどのような弊害を生むのか、ServiceNowでどのようにサイロ化を解消しDXを実現していくかについてご紹介しました。

ServiceNowは、システム間連携、ノーコード/ローコード開発、SaaS機能を組み合わせて、柔軟かつスピーディーにプラットフォームを構築することができます。当社においては、ServiceNowを活用したDX推進を数多くサポートしています。
「ServiceNowを活用してDXに取り組みたいが、どのように進めればよいかイメージできない」というお客様は、どうぞお気軽にご相談ください。